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イソイソと.......4話
◆◆◆
祭りから数日経って心も身体も元気になったから仕事も行って金魚達の世話にも慣れてきた。
雅美さんは相変わらず俺に過保護で子供みたいで恥ずかしいけれど、でも構ってくれる事が嬉しい。その気持ちは何だろう?ってたまに思う。
「ユノ、聞いてる?」
目の前に手の平が来てヒラヒラと上下に動き貴一の声で我に返る。
「えっ?何だっけ?」
貴一をじっと見るとため息をつかれた後に「釣りの話」と言われた。
「あ、そうだ」
休憩の時間に貴一が店に来て、そのままランチ……って言ってもハンバーガーだけど、食べに来ていた。
「何?調子悪い?」
貴一は心配そうに俺の顔を覗き込む。
「いや、大丈夫……」と俺は笑って誤魔化す。
「ならいいけど……釣りは雅美さんも誘う?」
貴一から急に雅美さんの名前が出て俺は口にふくんだコーラを吹き出しそうになり我慢した。
「な、なんで急に雅美さん?」
「アキラさんでもいいけど、人数居た方が楽しいンじゃないかって思って」
「あ、うん……」
貴一から雅美さんの名前を聞いただけなのにどうして俺はドキドキとしたんだろう?ほんの少し前に雅美さんの事を考えていたから?そのタイミングで名前が出たから驚いたのかな?と自分で自分の気持ちを推理する。
「じゃあ、誘う?雅美さんの予定も聞かなきゃね」
「うん」
「雅美さんって彼女とか居るの?」
「へ?な、何急に?」
またもや心臓が鼓動を早める。
「雅美さんイケメンだし、彼女居てもおかしくないだろ?彼女とか居るなら余計に予定を確認しなきゃね」
貴一の言葉に俺は確かに雅美さんはカッコイイし、優しい。恋人が居てもおかしくないよね?
でも、彼女の話聞いた事がない。
いるのかな?……過去も居たりしたよね?俺が知らないだけで。
ふと、雅美さんのキスを思い出す。
優しいキス。
あの優しいキスを女の子にも……。
ズキンっ!!と急に胸が痛くなった。
どうしてだろう?なんで胸が痛くなるんだろう?
「じゃあ、雅美さんに予定聞こうよ」
食べ終わった貴一はトレイを片付ける。俺も慌ててトレイを片付けて店を出た。
◆◆◆
「釣り?いいよ?いつ?」
貴一から釣りに誘われた雅美さんは笑顔で返事をする。
「写真屋が休みの日はどうです?」
「いいよ」
貴一の提案にも即答する雅美さん。
「良かった、じゃあ、OKって事で。雅美さん即答してくれましたけど、彼女さんとかは?居ないんですか?」
ナチュラルに聞く貴一に俺は心臓が止まりそうになる。
「彼女?」
雅美さんはキョトンとした顔をした後に「居ないよ?」と笑う。
「居ないんですか?雅美さんカッコイイし、女の子ほっとかないでしょ?」
「カッコよくないよ?それにもうオジサンだし」
そう言って笑う雅美さんはオジサンには見えない。童顔でたまに俺と買い物行っている時とか同じ歳に見られたりしてる。
「雅美さん、若いじゃないですか」
貴一も迷いなくそう言う。
「ありがとう。でもユノや貴一くんの若さには負けるよ」
「大学生で通りますよ」
「貴一くんはうまいねぇ」
雅美さんは笑いながら貴一の頭をポンと軽く叩く。
その光景を見て、俺はまた心臓がズキンと痛くなった。
何でだろう?自分でも分からない。
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