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イソイソと……3話

景色が一転して俺は天井を見上げる形になる。 そして、雅美さんも見上げている。 「雅美さん?」 雅美さんは俺の上で一点を見つめている。見つめているのは俺なのかな? じっーと何も言わずに目だけが合っている状態。 「どうしたの?」 聞いてみても答えない雅美さん。もしかして、もしかしなくても物凄く怒ってる? 俺が無理してエッチして体調崩しているアホだって呆れてる? 「あ、あの、ごめんなさい、俺……」 と言いかけた時に唇が触れた。 軽く。 そして、雅美さんは俺の髪を撫でて「謝るくらいならしちゃダメだろ?」と言う。 「はい……」 と思わず返事。 そのあと雅美さんは俺の額に軽くキスして、俺の上から退くと「そのまま寝てて」と言う。これは言う事きかないと後からまた怒られるんじゃないかって予感。 「はい」 俺は素直にその言葉に従った。 しばらくするととても美味しそうな匂い。雅美さんがご飯作ってくれているんだろうな。 俺は目を閉じた。 そして、さっき、……雅美さんにキスされたよね?とふと頭を過ぎった。 前も軽くキスされた。泣いてたからだ。 きっと、不安になっているから落ち着かせようとしてくれてるのかな? 嫌じゃない。 雅美さんのキスは嫌じゃない。むしろ……なんだろう?凄く優しいっていうか自然にされちゃうから受けて入れしまう。 アキラさんの時はドキドキするのに。 この違いって何だろ? アキラさんが恋人だから? 恋人だからドキドキするのかな? 雅美さんはドキドキよりも……ドキドキよりも。 凄く暖かくなる。 俺はさっき雅美さんの唇が触れた自分の唇を指先で触ってみる。 軽いキスだったけど、雅美さんの唇の感触は思い出せた。 また……してくれるかな? そんな事を考えて目を閉じた。 ◆◆◆ 次に目を開けた時、アキラさんが帰宅してて、雅美さんは帰った後だった。 「まーにまた叱られちゃった」 目を覚ました俺にアキラさんはそう言うと優しく微笑む。 「ユノ……可愛すぎて我慢できん俺が悪いっちゃけどさ」 そう言ってアキラさんは俺の頭を撫でる。 「アキラさん」 「ん?」 俺に微笑むアキラさんに両手を伸ばして「おかえり」と言った。 「あ、そうかただいま言ってなかったな。ただいまユノ」 アキラさんは俺に覆いかぶさり抱き締めてきた。 そして、そのまま首筋にキスされて、そのままキス。 口内にアキラさんの舌が入ってきて絡んできた。 舌が絡むキス。 俺はつい、雅美さんのキスを思い出した。 雅美さんもこういうキスってするのかな? っていうか雅美さん恋人いたりしたよね?そしたらその人とこんなキスしたりしたかな? あの雅美さんがこんなキス……しちゃうの? 俺は見た事もない妄想の中の雅美さんの恋人に少しモヤっとした感情を覚えた。 どうしてモヤっとするのかわからないけれど、恋人がいたならキスもするし、もちろんその先も。 雅美さんが恋人を抱く……という事を想像したら「だめ……」と思わず声が漏れてしまった。 「わ、悪いユノ!言ってるそばからがっついた」 アキラさんが慌てて俺から離れた。 「ユノ、飯まだだよな、一緒に食べよう。まーが作ってくれてる」 アキラさんは立ち上がり俺に微笑んだ。

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