131 / 133
イソイソと……2話
◆◆◆
朝起きたら、ちょっと怠さを感じた。
朝食はアキラさんが作ってくれたから楽だったけれど、仕事は昼からだから良かったかな?
アキラさんを送り出した後、二度寝しちゃおう。
行ってらっしゃいのキスをアキラさんとして。このキスはなんだか恥ずかしい。新婚さんか?と毎回思うのだ。
で、金魚にご飯あげて……。
ご飯あげたらソファーにゴロンと横になった。
前に雅美さんに言われた事を思い出す。
無理してセックスはするもんじゃないと。確かに今日はちょっとダルいかなあ?
俺って流されるタイプだって分かっているけど、自分を必要とされてると思ったら流されてしまうんだろうなあ。
そんな事を考えていたら玄関で音がした。
アキラさんかな?と思い起き上がる。忘れ物かなあ?
玄関へと行ってドアスコープを覗くと「雅美さん!」だった。
慌てて開ける。
「おわ!ユノ」
いきなり開けたから驚く雅美さん。
「おはよ、ユノ」
「おはよう……雅美さん、どうしたの?」
「ん?金魚の水槽の変えをじい様が持ってけって」
雅美さんの足元に水槽が1つ。
「洗う時に他に入れておかなきゃいけないでしょ?その変え」
「そんなの言えば俺が取りに行くのに」
俺は慌てて水槽を持ち上げようとしゃがんで、クラリと目眩がして、咄嗟に雅美さんに支えられた。
「ユノ」
「あ、えへへ、大丈夫。ちょっとバランス崩した」
照れたように雅美さんから離れた。
「水槽は持っていくから」
雅美さんは足元の水槽を持ち上げる。
水槽を部屋に運んで下へと置くと雅美さんは俺を見て「顔色悪いよ?」と額に手を当てた。
「だ、大丈夫」
「ダメ!ユノの大丈夫は信用ないから、ほら、熱計って」
雅美さんに強引にソファーに座らせられて熱を計らされた。
雅美さんから逃げる事は不可能。しかも、静かに怒るから地味に怖い。
ピピッと体温計が音を出す。
雅美さんが素早く体温計を俺から取る。なんせ、電子表示を消すという行為をした事あるから。
「37.5」
「へ、平熱」
「どこが?8度近いでしょ!もう!ユノは!」
雅美さんはひょいと俺を肩に担いだ。
細身でなんとなく女性っぽい雅美さんは力持ち。重い機材を軽々と運ぶから俺なんて楽勝。
ぼすんとベッドに下ろされた。
「着替えて」
「え?何に?」
「パジャマとか寝やすい格好に!」
ビシッと言われ「はい!」と思わず返事をしてしまった。
「今日は休みね」
「えっー!嫌だ」
「嫌だじゃないでしょ!」
雅美さんの迫力に負けて着替える俺。
着替えている俺をじっと見る雅美さん、なんか恥ずかしい。
「ユノ……昨日、アキラとやった?」
はいいい?
俺はその質問に答えきれずに耳まで赤くなったと思う。顔が熱いもん。
「もしかして、調子悪いのってそのせい?」
「えっ?いや、ちがっ」
俺は頭と両手をブンブンと振る。
「アキラ……ほんと、アイツ」
一瞬、雅美さんが違う人に見えた。いつもの優しい雅美さんじゃなくて、なんか上手く言えないけど、見た事がないような表情をチラリと見せたのだ。
「ま、雅美さん!違う、俺だって、気持ち良い事好きだし、それに」
アキラさんが怒られてしまうって咄嗟に思った。
俺に無理させて、熱出させたって責められる。
「俺が良いって……」
次の言葉を言う前に俺は雅美さんにベッドに押し倒されていた。
ともだちにシェアしよう!