11 / 133
第11話
*******
髪とカラーを終え、帰ろうとする俺に、
「明日、夜、飯食いにいかない?」
と言われた。
「あー、俺、給料前だから金ないです」
「おごるよ」
「えー、だめですよ、そんなの」
断る俺に、
「ばか、デートに誘ってんだよ」
と頭をグリグリと撫でられた。
「あっ……」
デートか。
そっか、デートか……………分かんなかった。
「嫌?」
寂しそうなアキラさんの顔。
「嫌じゃないです」
「良かった。じゃあ、メールする」
嬉しそうに笑うアキラさん。
「はい。待ってます」
照れてしまう。
そっか、デートか。
デートなんて初めて。
何時もの商店街に出ると、ふと、雅美さんの顔を見たくなった。
美容室から歩いて5分。
あれ?
シャッターが閉まってる?
歩く度に近付いてくる写真屋はシャッターが閉まっていた。
今日は店休日でもないのに。
鍵が掛かってるかな?と思いながらシャッターを上げようとした時に、
「なんしようとや?」
爺様の声。
振り返ると爺様が立っていた。
相変わらず気配がない。
「今日、休みやったと?」
「昼からな。ユノはどうせ休みやったけん、何も言うとらんけどな」
そう言われて雅美さんが月曜日という単語を口にしたのを思い出す。
「じゃあ、まさ、店長は?」
「散歩しちくるっち」
「どこに?」
「お櫛田さん」
お櫛田さんは櫛田神社の事。
「何しに?」
「初詣げなっ」
爺様の言葉に俺の足は神社に向かった。
まだ居るかな?
居るといいなっ。
神社の中に急ぎ足で入ると木に何か結びつけている雅美さんを発見。
「雅美さん」
声を掛けると俺の方を振り向きニッコリと笑ってくれた。
ともだちにシェアしよう!