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第10話
重ねるだけのキス。
「さてと、カラーしよっか」
アキラさんは頭をポンポンと軽く叩いて笑った。
椅子を元に戻されて、髪を少し切った後にカラーをしてくれるアキラさん。
髪やカラーをする間、アキラさんの手がやたらと視界に入り、
長くて綺麗な指だなあ~と見ていたら、
「どうした?大人しいな?」
と顔をのぞき込まれた。
「ん?指綺麗だなあーって」
アキラさんは一瞬キョトンとした後に笑い出した。
「ありがとうユノ」
その長くて綺麗な指は俺の頭を撫でる。
アキラさんは笑い上戸みたいだ。
カラーは少し押さえた茶色。
髪も結構短くなっていた。
「なんか、魔法の指先だね」
そう言った後に子供みたいだったかな?と後悔した。
でも、
「魔法の指先かあ~、ありがとう」
とアキラさんはバカにせずに嬉しそうに笑う。
………えへへっ、
こんなに嬉しく笑ってくれるなら言って良かったって思った。
「ユノ、番号とメアド交換しよう」
スマホを出すアキラさん。
「あっ、はい」
俺も慌てて携帯を出す。
「あれ?ユノってガラゲー?」
そう俺の携帯はガラゲー。
爺様でさえスマホなのに。
「変えどきって分からなくないですか?ほら、1ヶ月違うだけで性能良いのが出てくる」
「あー、確かに」
「それに携帯はあまり使わないからガラゲーでも良いかなって」
「アプリとか結構楽しいけどな。ブログとかさ」
「ブログとか?だいたい日記って他人に見せるもんじゃないでしょ?機械的な文字でコメント貰ってもリアリティはないもん」
「ユノって………中身オトナだな……んじゃあ、メールとかしない?」
アキラさんが言いたいのはきっと、メールしたら迷惑?と言いたいのだと分かるから、
「メールはします」
そう言ったら、凄く嬉しそうだったから、やっぱりメールしたかったんだなあって分かってアキラさんが可愛く見えた。
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