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第9話

「何で泣いた?初めてのキスだから?」 真顔で俺を見るアキラさん。 「アキラさんは俺が好きなの?」 「ストレートに聞くなあ。うん、好きだよ」 「俺、男だよ」 「知ってる」 「それでも好きなの?」 「うん。好き」 俺から目をそらさずに好きと言ってくれるアキラさん。 「ありがとう」 そう答える俺。 「それはどっちの意味?良い?悪い?」 「わかんない」 「わかんない?突っぱねてもいいだぞ?男からの告白なんだからさ」 アキラさんはまだテンパってるのかな?微妙に辻褄が合わない。 「俺、人を好きになった事ないからわからない」 「一度も?」 その問い掛けに頷く俺。 「だから良く分からないんだ」 雅美さんが気になるのは恋愛の好きじゃないよ、きっと。 アキラさんの好きは恋愛の好き。 俺はまだ恋愛経験がないもん。 「じゃあ、俺と初めてを全部やってみない?」 「初めてを?」 「そう。少しづつで良いからさ、俺と色んな体験しようよ?だめ?」 アキラさんの問い掛けに俺は、 「だめ………じゃないですけど?」 と答えた。 「じゃあ、OKって事?」 アキラさんが凄く嬉しそうに笑う。 「とりあえず………どんなものか試しに」 「お試し期間かよ」 アキラさんは笑い出して、 「でも、ユノが俺を好きになるように努力するよ」 直ぐに真顔になった。 「よろしくお願いします」 俺が軽く頭を下げるとアキラさんも慌てて頭を下げた。 「で、何で泣いたの?」 さっきの会話に戻る。 「誰かに必要とされたから」 だから泣いた。 初めてのような気がする。 「ユノ」 アキラさんは椅子を横に向かせて俺と向き合うと、顔を横に傾けて唇を重ねてきた。 2回目のキス。

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