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第11話
結論から言うと、荷物の中身はプレゼント用にリボンで装飾された貞操帯だった。
それから、他にも大人の玩具がたくさん。俺を手放す気はないと言い、どこから漏れたのか、俺がまだ奴の家に住んでいることがなぜわかったのか尋ねると、嬉しさを隠した複雑な声で言った。
『全部知っている。もう何の心配もいらない。きみは私のものだ』
そうじゃなく、どこから俺のことが漏れたのか知りたかったのだが。アメリカに渡ってしばらくあとに、奴は兄の画策を知り、逆に辞職をチラつかせて、俺との関係を認めさせたようだった。
俺の周囲についても、徹底的に調査をしたようで、奴以外の男の影などないことを、とっくの昔に知られていた。
あの時、俺と一緒になって、散々泣いた癖に。
一体、奴がどんな顔でこんなものを買ったのか、想像もつかない。
でも、最初に送ってくるのが大人の玩具ってところが、奴の思考回路の独特のぶっ飛び方を端的に表していて、俺は思わず泣きながら笑ってしまった。
笑ったことさえ、数ヶ月ぶりだということに、その時になって気づいた。
電話を指定された番号に掛け直すと、すぐに奴が出た。
『気に入ってくれたか?』
貞操帯なんか送っておいて、そんな言い方、と思うと、可笑しくて、また涙が出た。
「なあ、俺……」
『ん……?』
甘い声に引きずられるようにして、その時、俺は初めて奴に言った。
「ごめん。嘘ついて」
『ペナルティだな。いずれ対価を払ってもらう』
「わかった。それと──」
俺はTシャツの袖で涙を拭い、ずっと言えずに後悔していた言葉を、吐いた。
「たぶん、俺、あんたを愛してると思う」
愛している。
心の底から、奴よりもきっと強く。
*
それから、画面越しにしたセックスの回数は、はかり知れない。
長期休みをどうにか工面して、空港のホテルでするだけして帰ったこともある。
でも、俺たちは繋がっていた。繋がったままだった。
信じられないだろうが、そうだったのだ。
それでも、三年と八ヶ月、指輪を携えて帰ってきた奴の腕の中に飛び込むまで、俺は待たなければならなかった。
俺たちには、それだけの時間が必要だった。
それだけだ。
=終=
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