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【半端者と言われても…】

※本編終了後のお話です。 Sould Out、大成功でツアーファイナルを終えて、Linksの知名度はどんどん上がっていった。 エンディングSEのeternalクラシックバージョンも好評で、その演奏が学生によるものだと知られるとクラシック界でも話題となったそうだ。 Linksはメディアへの露出も増え、メンバー全員ルックスもよい彼等は注目の的に。 少しずつ曲にタイアップがつくことも増えてきた。 紅葉はベースの腕もメキメキと上がり、5弦ベースも弾きこなしている。 今まではずっと凪がリードして曲の構成のアイディアを出していたが、最近は対等で、阿吽の呼吸になり、紅葉からのアイディアを活かすことも多い。 売れてきたLinksへのやっかみからか元Linksのベースのサクが接触してきた。 「随分とご活躍のようで…! …誰のおかげだと思ってんの?」 「はぁ? 多分お前のおかげではないよね?」と凪は一言で追い払うが…。 「今のヤツ(紅葉)の方が上手いって?」 「そりゃあね。あいつは…次元が違う。」 紅葉には生まれ持った才能にプラスしてずば抜けた音楽センスと努力を惜しまない根性がある。 「そう?ってか、今のLinksって全員半端者の集まりだよなー」というサクの返しに一触即発の雰囲気が漂った。 そこへタイミングよく光輝が顔を出し… 「サク…? 今さらよく顔を出せたね…。 田舎で家業手伝ってるって聞いたけど、そっちもイヤになってまた丸投げしてきたってとこかな?」 と切り込みを入れ、更に 「ゴシップ紙にあることないこと言うの止めてね。訴えるからね?」 と釘を刺すことは忘れない。 「遅れてごめんなさいっ!! あれ…?えっと…」 3人のもとへ紅葉が現れるとサクの顔は嫌悪で歪んだ。 それを隠して笑顔で近付く… 凪はいつでも 「初めまして。君の前任者だよ。」 「やっぱり! こんにちはーっ! 初めまして!紅葉です。 えっと、不思議なベースラインの人? お陰さまで?今は僕がLinksにいられます! ありがとう!って言ったら失礼かな? でもありがとうー。これからも頑張ります!」 悪意も作為もない紅葉の台詞に固まるサクと笑い出す凪と光輝。 「ほらな(笑) 音楽のレベルだけじゃなくて人間性の次元も違う。」 「っ!!」 何も言い返せないサクは下を向くだけだ。 「何のお話??」 状況が分からず首を傾げる紅葉…。 「何でもないよ。 サク、わざわざ来てくれてありがとう。 いろいろあったけど、世話になったな…。 気をつけて帰れよー。」 「そうだね…、家業頑張って。 俺達はこれからも全力でやっていくよ。 何事も。じゃあ元気でね。」 一気に頭の冷えた2人は元メンバーにそう言って別れを告げたのだった。 確かにLinksのメンバーはバンド内の担当分野以外にもそれぞれ個人で取り組んでいる(いた)ものがある半端者の集まりなのかもしれない… 光輝は表向きもLinksのリーダーだし、プロデュースを含めた裏方でも責任者だ。 スタッフも雇っているが、全てにおいて自分が把握していないと気が済まないのだという。 みなはピアノ。 母親と同じくピアニストの道にも進みたいと、日々努力を重ねている。 もちろんヴォーカリストとしての努力も惜しむことはなく、ボイトレだけでなく、LIVEで動き回りながらブレずに歌う体力を鍛えるために始めたランニングは今やプロアスリート並みのタイムを出しているし、表現力と呼吸方の参考にと始めたヨガもかなりの実力だ。 誠一は天文物理学専攻で、最難関の大学で学びながら友人と事業部も興している。 どちらも卒業と同時に辞める予定だったが、権威ある教授に留意されて大学院への進学を目指しているところだ。 凪は調理師として働いてからの異業種のドラマーに転職した変わり者と言われている。 でも身体の基本となる食事は一般人だけでなく不規則な生活をおくるバンドマンにもとても大事で、健康管理の徹底には欠かせない。 料理をする時と同じように材料を把握したり、手順を確認するといった作業は音楽活動にも活かされている。 紅葉はヴァイオリン。 両親から受け継いだ才能と彼等から教わった基礎がベースにも活かされていて、他にはいないベーシストとしてLinksの新たな道を切り開いてくれた。 そしてバンド活動で得た自由な表現力はヴァイオリンの演奏にも活かされている。 サクのように見る人が見ればそれが中途半端に映ることもあるのだろう… でも全員、真剣なのだ。 バンドに対しての情熱も皆手を抜いたりしていない。 そしてこれからもそれは変わらないだろう…。 何を言われてもこれがLinksだ。 こんなバンドがあってもいいじゃないかと光輝は言う…。 「何で遅刻したの? 収録だから良かったけど、生放送ならアウトだよ? まぁ、連絡はくれてたからいいけどさ…」 ラジオ収録のあと、光輝に怒られながら遅刻の理由を聞かれた紅葉 「ごめんなさい、これ買ってたの。」 そう言って鞄から綺麗な箱を取り出した。 どうやらお菓子の箱のようだ。 「みなちゃんTVで見て欲しがってたやつ! 今日までだったから…!ギリギリ買えたよ。 光輝くんからって、渡してくれる?」 「…ありがとうっ! そっか、今日までだったか…忘れてた。 すっごい助かる。 え、いくらだった?」 「お金は大丈夫だよ。」 そういう紅葉にダメだと言い、お使い分とお礼を含めて多めに渡す光輝… 「好きな物を買いなさい。」 一気に機嫌を治した光輝は晴れやかな笑顔でお菓子の袋を受け取った。 このお土産があれば、しばらく妻の機嫌も良いだろう。 「ありがとうっ!」 「光輝…どっちにも甘やかし過ぎ(笑)」 「いいでしょ。紅葉は無駄遣いしないし、たまにはお小遣いあげても。」 「そーだけど…。 紅葉、何買うの?」 「りんごっ!! 美味しいやつ!!」 「ふっ。ほらね?」 「大家のじいさんから貰ったお取り寄せのりんごが相当気に入ったらしいよ。」 「凪くん! またうさぎさん作ってね。」 紅葉のお願いに凪は笑顔で頷いた。

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