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第53話 てつだいたい

「あ、あの、いずみくんすみません... 探してくれてるとは、思わなくて..」 「そりゃ、探しますよ」 「うう..」 どこか怒っているように口を歪める恭介に硝子は怖くて俯いた。 すると間に茶々が入り宥めるように恭介の前に両手を出した。 「まぁまぁ、ウチが頼んだの。ひなっちゃんにどうしてもって」 「ひなっちゃん...だと...」 恭介の顔から色がなくなり彼は暫く打ちひしがれているようだった。 「帰りましょう雛瀬先輩!」 そう言って彼に腕を取られ硝子は引っ張られるように立ち上がってしまった。 机の上に広げられた原稿や写真。 硝子はその熱意のこもったものをおいては置けなくて、歩こうとする恭介の腕を引っ張って制止させた。 「え...えっとでも....」 自分のような人間がおこがましいとは思うのだが せっかく自分に仕事を与えてくれた茶々の好意を無駄にしたくなかった。 手伝いたい。 こんなわがままなことを思ったのは、初めてで 硝子は怖くてぎゅっと彼の腕を握り締めてしまった。 「.......先輩..?」 恭介は複雑そうな顔をしている。 困らせているだろうか。やはり自分がだれかの役に立つことなんてできないのか。 二人は暫く言葉を交わせずにいると、茶々がぱんと手を叩いた。 「わかったわかった!なんとなくわかった!ちょいいずみんこっちきて」 「いずみん..?」 茶々は強引に二人を引き剥がし恭介を引きずり本棚の影に行った。 取り残された硝子は莫大な後悔を覚えながら、 力が抜けるように椅子に腰を落としたのだった。

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