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第150話 白熱症、ハルシネーション。

すっかり日が落ちてしまった。 後ろから恭介に抱きしめられ、その幸せに浸って硝子はくすくすと笑った。 ん?、と不思議そうに恭介が顔を覗き込んでくる。 「..俺ね、最初いずみくんが怖かった。」 「ああ..よく言われます」 「ふふ、そうじゃなくて、いずみくんは俺の世界では珍しい人だったから 俺を否定しない、むしろなんでも肯定してくれるから それがちょっと怖かったんだ…」 硝子が呟くと、恭介は黙っていて その代わりぎゅううっと抱きしめる力を込めてくる。 「...だからね、 いずみくんのせいでぐちゃぐちゃだなんていって... すみません、でした...」 他にもきっとたくさん傷付けたに違いない。 それでも彼が肯定し続けてくれたから、今自分は幸せでいられるのだ。 恭介は小さくため息をつくと、よしよしと頭を撫でてくる。 「真面目だなぁ先輩は」 「え?そ..そうかな」 「俺の方が謝らないといけない事いっぱいあるのに」 「..いずみくんは何も謝るような事してないよ…?」 「はぁ...だからぁ」 呆れたように呟く恭介。 また困らせてしまっただろうか。 余計なことを言ってしまったかもしれない。 「す..みません」 泣きそうになり、縮こまるように肩を竦めた。 すると恭介は、そっと頬に口付けて来て 硝子は彼を振り返った。 「もう、謝りっこなしにしましょう」 彼はそう言って微笑んで、優しく頭を撫でくれる。 その笑顔を見ていると胸の中が暖かいものでいっぱいになってしまう。 「......だいすき」 自然と、言葉が溢れてきてしまって 硝子は自分から彼にキスをした。 こんなに、誰かのことを大切に思ったことはあっただろうか。 幸せな気持ちでいっぱいになっていると恭介は固まっている。 「あれ?いずみくん...?」 硝子は我にかえり、鼻から血を流しながら微動だにしない恭介に焦りながら身体を離した。 やはり自分なんかが調子に乗ってしまうといけなかったのだろうか。 「ひ...ひなせせんぱい...今....っ」 「わ、わあ!?いずみくん!?」 恭介はそのまま倒れてしまい、硝子はティッシュで血を拭ってやりながらも だ..大丈夫です...、と片手を挙げられればホッと息を吐くのであった。 「お...おれも...だいすきです...」 血を滴らせながらもなお必死に伝えてくる彼に いけないと思いつつも硝子は思わず噴き出してしまい、くすくすと肩を揺らして笑った。 恭介は口元を両手で覆って涙目でこちらを見上げてくる。 「うう..可愛いすぎる…無理…死ぬ…」 「し、死んじゃダメだよ!」 あなたに笑っていてほしい。 笑うあなたのそばにいたい。 書き出しは、 あなたへの想いを認めた後で 考えるとしよう。 Fin

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