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11.ずっと…これからも…
「…。なんだか、俺が童貞だってバレた途端、マウントをとられた気がします…」
「そりゃあ…。まあ、可愛いなって思うよね。年下にあんな時に言われれば」
身支度を先に済ませた葵は、生徒会室に置かれた応接セットのソファーに寝転びながら、悠貴の身支度する姿をニヤニヤと笑みを浮かべながら見つめて答えた。
「どうせ…。俺は先輩より年下で経験もないですよ」
やっと自分も身支度を済ませた悠貴は、不貞腐れたように葵の横に腰かけると、足を組んでそっぽを向いた。
「今度は…。葵先輩に『もっと』ってたくさん言わせてみせますので、そのつもりで」
「はいはい。せいぜい頑張って、悠」
葵は笑いながら、子供扱いするように悠貴の頭を撫でた。
「また悠って…。だいたい、何なんですか?悠って…」
「ああ、それは悠斗に聞いたんだ。昔、弟のことを悠って呼んでいたって。悠って呼ぶと、後ろをずっとついて来たんだーってさ」
悠貴は遥か昔に、たしかに兄の悠貴に悠と言われていたことを思い出す。
「…。それでですか…。言っておきますけど、それ、幼稚園ぐらいの話ですよ…」
「でも、いつか俺にもついて来てくれたら嬉しいなって。だから、俺はずっと心の中で呼んでたの。悪い?」
「悪いわけじゃ…」
「それにしても酷いよねー。俺が悠斗の代わりに悠貴を利用するなんて思うなんて」
「俺も必死だったんですよ。葵先輩の目に映りたかったんで…」
悠貴は顔を背けながらも、ソファーの上に置かれていた葵の手をそっと自分の手を重ねるように握った。
握られた手を見つめて葵は幸せそうに微笑むと、悠貴の肩に頭を預けるように傾けた。
「ずっとさ…。窓から見てたんだ、部活中の悠貴のこと。実は悠斗に弟だって紹介される前から…」
「そう…だったんですか…」
憧れだった葵が、実はそんなにも前から自分のことを見つけてくれていたのかと知った悠貴は、つい嬉しくなる。
すると、頬が熱くなるのを感じたため、葵に気付かれまいと、さらに葵から顔を背けた。
「あれ?照れてる?」
「照れてないです…」
「嘘を言うなよー。ほら、お兄さんに顔を見せてごらん」
揶揄うように、葵は悠貴の頬を人差し指で何度も突っついた。
(この人は…)
悠貴は素早く葵の腰に手を回すと、葵を自分に引き寄せ、耳元に顔を近づけた。
「葵…。愛してるよ…」
「なっ…」
「ああ、やっぱり葵先輩って、こういうのが弱いんですね」
先ほどの余裕はどこにいったのか、耳まで真っ赤にしながら口をパクパクさせる葵の可愛らしい反応に、悠貴はにっこりと笑うと、力いっぱい葵のことを抱きしめた。
「愛してます、葵先輩。俺に色々教えてくださいね」
「…バカ…」
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