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おともだち 第88話(春海律)

「それで、結局どうだったんですか?」  店を閉めて片づけをしながら、待ちきれずに真樹に問いかける。  話が弾んでいたのはわかったが、律は他の客の相手もしなければいけなかったので、マリアたちがどんな話をしていたのかわからないのだ。 「ん?あぁ、全然大丈夫でしたよ」 「全然大丈夫とは?」 「え~とね、地域活性化プロジェクトって聞いたことないですか?」 「あ、え~と、地域を盛り上げるようなイベントとかを企画するやつですか?」  たしか以前、商店街の方でそんな話が持ち上がったと聞いたことがある。 「まぁ、簡単に言えばそんな感じですね。大学のプログラムの一つにもそういうのがあるらしいんですが、それをもっと活かして実際に活動していきたいという人たちの集まりみたいで、学生団体を立ち上げて、いろんな地域の問題点を調査したり、解決策を模索してイベントを企画してみたり――……っていうことをしているみたいです」 「なんだかスゴイですね……」 「そうですね、みんなかなりしっかりした考えを持ってる子たちばかりで、話していて愉しかったですよ。マリアも彼らと活動すれば日本文化のいろんな面を知ることが出来ていいと思いますよ」 「そうですね……彼らと話した真樹さんがそう言うなら大丈夫そうですね!」 「とは言え、やはりまだ学生なので羽目を外してしまうこともあるでしょうから、一応飲み会の時にはマリアに飲ませすぎたり変なことしたりしないよう釘を刺しておきました」  真樹がにっこり笑った。 「ありがとうございます!」 「いえいえ、マリアは恋のライバルですが、律さんの大事ないとこでもありますからね。つまり俺にとっても大事ないとこみたいなものですから、マリアに悪影響な輩はしっかり排除していきますよ」  何だか、真樹さん……若干父親の心境になってませんか!?  ともあれ、真樹が太鼓判を押してくれたので、マリアには彼らの活動を詳しく説明し、内容を知った上でどうしたいか聞いてみた。 「OK!ボランティアはイギリスでもよくしてたから、やってみたい!」 「そうですね、海外の方がそういう活動は盛んですものね。ただ、飲み会での飲みすぎには注意ですよ!?」 「はーい!」  気楽に返事をしてマリアが部屋に戻って行った。 「……本当にわかってるんでしょうか……」 「まぁ、飲み会の時にはまた注意を促せばいいんじゃないですか?何なら居酒屋まで迎えに行ってもいいですし」 「そうしましょうか」  お互いの過保護っぷりに思わず顔を見合わせて苦笑した。 ***

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