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第7話

見慣れない車に乗せられて、自宅に着いた。 玄関のドアノブすら、冷たく感じるのは、緊張のせいだろうか。 「すまなかった。」 彼に向かって深く頭を下げたが、とてもじゃないが、それだけで済むとは思えない。 迫る別れを自覚した。 次の瞬間、彼は両手で私の手をとり、口を開いた。 「いや。今回は俺も悪かった。真さんが、他人の匂いとか声に敏感なのは、俺も解ってたつもりだった。けど、まさか。あんな短時間で出てっちゃうとは思ってなくて。マジで焦ったよ」 「私の方こそ、悪かった」 「いや、実は俺も。仕事中の自分を真さんに見られてるみたいで。かなり落ち着かなかった。だから、今回はお互い様ってことで。ね?」 思いがけない言葉に私は驚いた。 「じゃ、仲直りの1杯」 渡されたマグカップには、私好みのカフェラテが湯気をたてている。 「ありがとう、亘」 「もう、良いから」 優しく微笑む彼の温もりに、漸く帰宅した気持ちになれた。 「ただいま、亘」 「お帰り、真さん」

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