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第6話
「そんなもの、此処の飲み代を払えばチャラだろう」
よく耳に馴染んだ声が、すぐ傍から聴こえた。
(彼だ。彼がそこにいる!)
私は呼吸さえ忘れて、立ち尽くした。
「それでは。お疲れ様です」
ポンと私の肩を叩くと若者は去って行った。
後に残されたのは、無表情な彼と、俯いた私。
「さあ、出よう」
とてもじゃないが、気まず過ぎて、目も合わせられない。
が、ゆっくり優しく私の肩を抱くように歩き出した彼に従うことしか出来なかった。
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