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番外編 バカップル

「え、今日遅いの······?」 「ああ、悪いな。」 黒のワイシャツに腕を通すハル。どうやら今日はちょっとした会議があるらしい。 「何時になるの······?俺、最近ハルがいないと眠れないんだよね。」 「気付かなかった。何だ、何か不安なことでもあんのか?」 ボタンが解けたまま、俺の隣に座って頬を撫でてくる。 「ううん、不安とかじゃなくて、ハルの匂いを嗅いでたらぐっすり眠れるから······。」 「確かに、俺と寝てる時はなかなか起きないな。」 「気持ちよくて起きたくないの。早めに帰ってきて」 「わかったよ。」 額にキスされて、「口がいい」と文句を言うと、小さく笑って言った通りにキスをしてくれる。 「酔って帰ってこないでよ。」 「それは······まあ、努力するけど。」 「酔い潰れたハルって質が悪いんだもん。」 「うっ、だってよ······」 「安心して、そうなったら庭に捨てておくから!」 「安心できねえ!!」 ケラケラ笑って、それから俺を抱きしめたハル。言葉では伝えないけれど、抱きしめてくれるのが嬉しくて、首にちゅ、ちゅって何度も唇を当てる。 「早く服着て、お仕事いってらっしゃい。」 「ああ。行ってくる。」 服をちゃんと着たハルは、いつもより表情を引きしめて部屋を出て行った。 布団を抱きしめて立てた膝に顎を置く。 「今日は何しよう······。」 暇だなぁ。いつもはハルがいるから、ハルのこと見てるだけで時間は立ってるけど、今日は特別何かをすることもない。 「暇ぁ······」 そのままベッドに倒れた。ぼーっとしていると、視界に入ったのはクローゼット。 いいこと思いついた! ベッドから出て、顔を洗ってクローゼットの中に入る。そこにはハルのたくさんの服があって、ニヤニヤしながら服を選んだ。 「わ、大きい······ビッグシルエットってやつ······?」 ハルの大きいスウェットを上に着る。襟元を掴んで鼻に近づけスンスンと嗅いだ。 「んふ、ハルの匂い······」 そうして匂いを嗅いでいるとムラムラしてきちゃって、でもぐっとそれを堪えた。 せめて、せめて人が少なくなる夜に······ 「朝ご飯食べよ。」 それから部屋を掃除して、もし何か簡単な仕事があるならやらせてもらって、それから······。 「うん、やることはいっぱいあるもんね。」 ハルの服を脱いで、ご飯を食べることにした。 浅羽組の台所に行くと、鳥居さんがいて眠たそうに欠伸をしている。 「とーりーいーさんっ!」 「わあ!陽和くんじゃーん!おはよぉ」 「おはようございます!」 お味噌汁を温めているみたい。鍋の中を覗くとお豆腐とワカメがぷかぷかと浮いていた。 「あ、美味しそう······」 「陽和くんも食べる?俺ね、寝坊したから1人なの〜。」 「食べる!」 1人のご飯が寂しい事は知ってる。 温まったお味噌汁と、白米を鳥居さんと一緒に食べる。 「鳥居さんは朝弱いんですね。」 「うん。皆が起こしてくれるんだけど、いつも殴っちゃうみたいでさ、記憶ないんだけどね。」 「え、な、殴る?」 「うん。こう、バーンってね。」 きっとバーンなんて軽いものじゃないんだろうけど、そうなんだって言って頷いた。 「あ、そうか。若は今日外に出てるのかぁ。」 「あ、うん。そうなんです。小さな会議だって言ってましたけど······。遅くなるって」 「ついて行ってるのは確か、八田さんと世那だったかな······?八田さんの所には命さんの弟さんがいるから、早めに帰ってくると思うんだけどなぁ。」 「命さんの、弟······?」 命さんに弟がいたんだ。 でもなんで八田さんの所にいるんだろう。 「うん。命さんには弟がいるんだよ。結構年が離れてる。今は高校生かな······?」 「命さんの弟さんなら、きっとイケメンなんだろうなぁ。」 「イケメンだよ。それによく笑うし、愛想が良いんだよね。」 「今度会いたいって、命さんにお願いしてみようかな。」 「あ、なら俺もついて行こー!八田さんにも聞かないとね。」 そんな話をしながらご飯を食べ終えて、食器を洗い部屋に戻った。窓を全開にして掃除機を当てる。 「窓も拭こ」 暇だから普段はしないことを率先してやる。こんなこと滅多にない。本当、4年に1度とかそんなレベル。まるでオリンピックみたいだ。 「ふふっ、頑張ろ!」 帰ってきたハルに褒めてほしいし。 そして、やることを終えた俺は組の資料をホチキス止めする仕事をもらって、それが終わった後は部屋に戻り、またハルの服を着て匂いを嗅いでいた。

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