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第2話

冷ややかな一重。鋭い眼光。ゾクゾクっとした。 (うわ、ヤバイ…!) 「…顔、隠しますね」 ガーゼで顔を覆い、ホッとした。誠は自分の顔が熱を持っていることに気づいたからだ。きっと今、自分は赤面している筈だ。 「シャンプーしていきますね。お湯、熱かったら教えてください」 小山はそういうと、湯を流しながら誠の髪を洗っていく。小山の指でシャンプーをして貰いながら、誠は何とか平常心を取り戻しつつあった。 (ああ、この子シャンプー上手いな) 他人にシャンプーをして貰うのは何と気持ちいいことか。誠はすっかりリラックスしていた。力もちょうどよくてこのまま、眠ってしまいそうだ。 シャンプーの爽やかな香りもリラックスできる要因だ。 完全にリラックスモードに入っていた誠だが、小山の指が耳の辺りを洗ってる時に、突然背中がゾクッと泡立つ。 (うわっ!) 小山が耳たぶを触ってきたのだ。しかも、何度も。初めは偶然かと思っていたが、途中から明らかに意識的に触れてきている。耳の後ろ、耳たぶと弱いところを触れられて誠は鼓動が高まっていく。せっかくリラックスしていた身体がまた硬直する。力を入れようがない、こんな無防備な姿ではどうしようもない。挙げ句の果てには、息をフッと耳に吹きかけてきたので、誠はさらに身体をビクッと震わせた。 (何してんだ、こいつ…!) すると突然シャンプー最中なのに、顔を覆ってたガーゼを小山はゆっくり外して誠の顔を覗き込んできた。うっすら、微笑みながら小山は誠の耳元で低く囁く。 「気持ちいいとこ、ありますか?」 *** 「あれ、白河さんは?」 シャンプー台から移動してきた小山は藤川に聞かれて、タオルを畳みながら答えた。 「トイレですよ、すぐ戻られます」 そんな二人の会話がトイレの中へ聞こえて、誠は頭を抱えた。 (何なんだよ、アイツ…!) 耳元で囁かれた後も、シャンプーというよりも「愛撫」に近い小山の指の動きに、誠の身体はすっかり敏感になっていた。トリートメントが終わる頃には立ち上がれないほどだった。身体の中心のソレが反応しかけていて、シャンプー台から降りる時には、真っ赤な顔をしてトイレに行きたいと小山に訴えた。 「どうぞ、ごゆっくりと」 フッと笑った小山にはきっと気付かれている。トイレに入ると誠は慌ててスラックスから膨張してしまってるソレを取り出して、扱く。 出先でこんなことするなんて、と羞恥で顔が燃えそうだ。 さっきまでの小山の指の感触を思い出しながら、誠は声を抑えて自分自身を高みに連れていく。そして… 「…ッ!」 身体がすっかり火照っていたせいで、あっという間に白濁したものを放出する。その後、慌ててそこに常備されていた消臭スプレーを振りまいた。 席に戻ってきた誠に、藤川が声をかけながらクロスを広げる。 「大丈夫ですか?」 「あー、ちょっとね。何だかお腹痛くなって」 そこは突っ込まないで欲しい、と思いながら鏡を見た。鏡の中の小山は何もなかったかのように、床に落ちている髪を掃除している。 藤川に髪を切ってもらっている最中にも、チラチラと見てしまう。何であんなことしたのかと本人に聞きたくて。 「白河さん、すみません。ちょっと外しますね」 耳元で聴こえていた藤川のハサミの音が途切れて、そのまま奥に退いた。どうやら他のスタッフに呼ばれたらしい。誠は、藤川を待ちながら大きくあくびをした。指名の多い藤川はたまに抜けることが多く、相変わらずの人気ぶりだなあと誠はぼんやりと考えていた。 「白河さん」 背後から呼ばれて驚くと、鏡の中にいたのは銀髪の彼だった。まさか声をかけてくるとは思わなくて、誠は体が硬直する。何も言葉が出ない誠の前面の鏡面台に、白いカードを置いて小山は鏡越しに話しかけてきた。 「これ忘れないように、持って帰って下さい」 小山はニコリともせず、無表情な顔を鏡の中の誠に向けた。

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