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第15話

「…ん」 朝日の気配を感じて、誠は目を開けた。手元のスマホで時間を確認すると朝の七時。今日は土曜日だからゆっくりできる。 身体を動かそうとしたとき、隣に人の頭があって一瞬驚いた。隣で気持ち良さそうに寝ているのは、小山だ。 (そう言えばゆうべ…、ヤッたんだっけ) 寝顔をまじまじと見る。昨日の最中の、荒々しい顔はそこになく、誠の好みの端正な顔があった。そういえば前回の時も寝顔を見たな、と思い出す。あの時は急に腕を回されて驚いた。今日は腰に腕を巻かれている。 基本的に甘えん坊なのだろうか、と見ているうちに小山が目を開く。 「…おはようございます」 律儀に敬語なのがおかしくてつい、吹いてしまった。 「なんで笑うの」 「お前、ヤってる最中はタメ語なのになんで、ちぐはぐに敬語になるの」 「…クセ、かなぁ…。もう、白河さんお客さんじゃないからタメ語でいいのか」 一人で納得する小山。あんだけ言葉攻めしてきたくせに、と誠はぶつぶつ呟いた。 目が覚めても、誠の身体に抱きついたまま。 「お前、抱きつくの好きなんだな」 「人の体温って気持ちいいから」 「前のときも、無意識に俺に抱きついてきたしな」 「…あの時、起きてたから。無意識じゃないよ」 「へ…?」 射るような小山の瞳が、真っ直ぐ誠を見つめる。 「あの、勘違いだったら悪いけど」 誠はその瞳に負けまいと言葉を紡ぐ。 「…俺のこと気に入ってんの?」 その言葉に小山が笑う。 「気に入ってるって」 なんだよ、と頬を膨らます誠。小山は腰に回してる腕を力を入れて誠を強く抱きしめた。 「そんなレベルじゃない。そばに置いておきたい。一緒にいたい。…俺は」 誠の頬に小山がそっとキスをする。誠はこの先の言葉を、真っ赤な顔をして待っている。 「白河さんが好き、です」 「店と、部屋と…今日の三回しか会ってないのに」 誠は小山の頬を指でつつく。 「うん」 「ノンケのくせに」 「性別なんて関係ないよ、ヤレるし」 「…言葉!」 小山が吹き出したので、誠も笑い出す。 「この先どうする?リオくん」 スルリと小山の手から離れて誠は、背伸びしながらベッドから起き上がった。名前を呼ばれた小山はキョトンとした顔をしている。 「…なんで名前…」 ガウンを着た誠は窓の近くまで行って、カーテンを開ける。 「藤川さんが言ってんだよ。俺、営業だから一回聞いたら覚える訳」 「なるほど」 ノロノロと小山もベッドから出て、誠の横に立つ。窓の外は、夜明けまで降っていた雨が上がり、雲が切れてきて朝日が差し込んでいる。 「あ…虹だ」 ビル群の向こうにうっすらと見えたのは、朝の虹。二人でそれを見ていると小山が抱きしめてきた。 「とりあえず…シャワーする?誠さん」 今度は小山が名前を呼んで、誠が振り向いてキョトンとしていた。 「あ!お前、顧客名簿!住所も盗んだだろ!」 小山は大笑いしながら 抱きしめられていた手を離して浴槽に向かう。 (なんだ、よく笑うやつじゃないか) その笑顔を可愛いと思ったことは悔しいので、黙っておこう。 三回しか会ってなくて。カラダから入った関係だけど。会いたい、と思った時にはもう恋に落ちていたのかもしれない。それは小山も誠も同じで。 「おいで、誠さん。シャンプーしてあげる」 「元美容師にしてもらえるなんて、贅沢だな」 ガウンを脱ぎながら、小山が差し出してきた手を握る。その手に小山はそっと口づけした。 「これからもシャンプーするから、誠さんの専属美容師として雇ってくれる?」 【了】

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