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第3話
壁際まで自ら追い詰められにいくのを愛琉は黙って気長に待っていた。一歩一歩距離を詰める。
「そういえばさ、名前何ていうの、お義兄ちゃん」
鮮やかな光に照らされ、愛琉の影が薄くなって義兄を包んだ。声を手に入れても半魚人は喋らない。
「槇島マキシマム何さんなの、お義兄ちゃん。教えてよ。おれたち、もう姻戚 なんだよ?」
半魚人は尾を振り、背中を壁について立とうとしていた。その必死な姿を愛琉は笑った。
「素直になったほうがいいよ。そのほうが、痛い思いも恥ずかしい思いもしないで済むんだから」
立てない半魚類は上半身を支えきれずに倒れてしまう。愛琉はさらに距離を詰めた。上半身を打ち付けた義兄の顎を拾う。美味そうな唇に吸い寄せられ、愛琉は水槽の匂いが微かに香るそこに口付けた。
『ん……っふ、ン…………っ』
唇の感触を愉しむことなく口腔を貪った。意外にも人と変わらない体温がある。執拗にヒトの構造をしている濡れた器官を遊ぶ。舌の厚み、重み、温 みを追う。追い詰めて吸った。拒否する腕が面白い。力が入らないらしい。それがさらに愛琉を煽る。
『ぅ……ん、ん……』
舌が上下から鋭く潰される。そして力の入らない大人の男の腕が愛琉を突き飛ばす。
「痛っ……」
血の滲む舌を見せながら愛琉はヘラヘラと笑った。
「痛いなぁ。飲みなよ、おれの生き血。飲めよ、魚野郎」
髪を掴んで無理矢理上を向かせた。開こうとしない唇に唇を押し当てる。腕が嫌がる。
『んっ……ふっァ、』
齧られた箇所を半魚人の舌に塗りたくる。首を振ろうとするのが可愛らしい。激しい抵抗で毛が抜ける。暴れる様に愛琉は胸が熱くなった。力無く現れた舌を甘く噛む。そのまま引っ張ると到底勝ち目のなさそうな儚げで嫋やかな少年を前に逞しく肉体が強張るのだから簡単にはやめられなかった。やがてあまり太さや頑健さのない愛琉に魚人は身を委ねた。崩れ落ちていき唇が離れる。まだ2人を繋ぐ唾液が釣糸みたいだった。立てずに転がる。息を切らしている。潤んだ目に睨まれ、唇も溶けたように瀞んでいる。
「お義兄ちゃん、キス弱いんだ。毎日してあげる。キスだけでイけるようにしてやるよ」
巨大な尾が動く。
「ねぇ。おれのこと別にぶっ叩いても構わないけど、それならおれにだってやりようあるよ、お義兄ちゃん。おれとあんたのお嫁さんの前でだらしく糞 放 り出したスケベ孔に卵孕ませて閉じてもいいんだよ?あ、いいね、それ。むりむり勝手に糞 垂れ流しちゃうなら閉じておくの。一気にぶっ放せば便秘もしなくなるでしょ?」
義兄はヒトの肌を残したすべてを真っ赤にした。指先は白くなるほど床に爪を立てている。
「ヒトみたいな反応するのやめなよ。あんたは犬猫みたいにおれやあの姉貴(おんな)の前でケツ穴見せて、糞するんだよ。あんたのその卑猥な穴が開いて糞ぶら下げてるところまで見てやるからな」
愛琉はケタケタ笑った。振りかぶろうとした尾が震えながら床に寝る。
「さ、舐めて。服従の証。人類 みたいに羞恥心があるお義兄さんのプライドを仕方なく守ってあげる。お義兄さんの穴が糞垂れてるところオカズにシコれない代わりに、そのお口で気持ち良くして」
髪を鷲掴んで鋭さのある鼻先を股間に押し付けた。激しい怒りの眼差しで見上げられる。それでも顔を埋めているところが陰部なのだから滑稽だ。
「お義兄さんのカラダがスケベなんだよ。また勃っちゃった。お義兄ちゃんさ、勘違いしてるよ。こんなのまだまだ優しいほうだよ?そんなに嫌なら後悔しなよ、自殺したこと。自業自得だよ。お国家 様を裏切ったのはそっちなんだよ?ちんちん舐めさせるなんて生易しい労働。糞だってこっちがさせてやるって言ってるのに人間 ぶって嫌がるじゃん。そんなワガママ許されないよ、お義兄ちゃん」
股間の膨らみに義兄の顔を押し当てながら愛琉は舐めさせる場所を出した。一度果てたとは思えないほど凶暴なものがぶるんと二度目の貌を見せる。
「食い千切ってもいいけど、お義兄さんの歯を全部抜いてお口も本当の口まんこにしたっていいんだからね。おれのちんぽは失くなるわけだけど、別にお義兄さんの口まんこ犯すのはおれじゃなくてもいいわけで、お義兄さん、舌噛み切って死ねなくなっちゃうよ」
血管を浮かせた赤黒い肉棒が半魚義兄に頬を叩く。
「さぁ、早く舐めて」
否応無しに髪を引き、口に極太棒を割り入れた。容赦のないピストンが始まる。歯が当たるのも構わず、口蓋垂まで貫いた。愛琉の腿で身体を支えている手が戦慄いた。喉を引き裂くような嗽 の音は聞いているだけでも苦しそうだ。
「喉締まるじゃん……っ」
『く、ふ……っン!ンく、ぅぐ、っ、ぅぅっぅっ、ぐっ、ぶふ、……っ!』
涙と洟水を垂らし、太く硬い肌茎もしとどになって粘こく照っている。
「喉ポルチオいいよ。歯の生えたまんこだよ、お義兄ちゃん……」
多量の唾液を分泌した口腔は、まるでローションを打っているかのような水音を立て、腰を振るたび窄められた唇からも漏れ出ている。
『ぉぐっ、ぐぉっ、ぐっぐっ……くぅ……っぉぶっ、』
「ああ……すごい。お義兄ちゃん、出すよ。きもちぃ……お義兄ちゃんの喉まんこすごい、優秀だよ。偉いね。お義兄ちゃ、あっ、んんッ!」
愛琉は声を上擦らせ、甘たるく喋った。半魚人は人間の腿を叩く。苦しさから力の入らない拳で訴えた。しかし射精に向かっている義弟の手は後頭部を尚更に股間押さえ、侵入した牡茎は締めることしかできない喉をさらに貫く。そして精液の爆流が炸裂した。
「んっぐっぅう!くぅ……っ、ぐ、ンん……!」
「ぁ………んっ、大事なタンパク質だよ……飲んで」
舌の質感、内膜、上顎の凹凸、吸引力と体温。愛琉はすべてを味わうように蠕動 した。喉で落とした子種の滓を口腔でも搾らせる。腰を回す。最後の一滴まで飲ませるつもりだ。
「あぁ……お義兄ちゃん、最高だよ。大好き。アイシテル。明日もいっぱい遊ぼうね」
まだ衰えない熱 り立った凶器を清楚な感じのする小さな口から引き抜いた。ぶるるんと弾け、どちらのものかも分からない液体が飛んだ。それをしまうこともせず嫌がる人魚に唇を寄せる。かえって拒まれていることが嬉しかった。
◇
半魚はげっそりとしてしまった。頬が痩 け、影を作っている。厚手のタオルを敷いたフロートマットに上半身を預け横になる。時折ぴちぴちと垂れ幕のような鰭 が動いた。罅割れた唇に、完全に人類の肉体を持った妻がストローを咬ませた。そして夫の荒れ気味の額や頬に手の甲を添える。彼は長い睫毛をゆっくりと眠るように伏せた。
「食欲が無いのねぇ。まだお腹が安定してないのかしら」
夫をよく拭いてから火水 は体温計を引き抜き彼の腋に挿れた。果たして半魚人にもヒト用の体温計が使えるのかは定かでは無い。出てきた体温も信じられるかどうか分からない。結果、熱はなかった。
「病院に連絡しますから。つらいでしょうけれど、もう少しの辛抱よ」
頬を気遣わしげに手の甲で撫で摩っていた火水は部屋のドアを叩かれて立ち上がった。眠りに入ろうとしていた人魚の切れの長い目が開いた。
「お姉ちゃん、ぼくだよ」
「あら、愛琉 ちゃん。今日はお義兄ちゃん、疲れているみたいなの。だから……」
「ええ……お義兄ちゃん、大変なの?お病気なの?」
火水は弟を帰そうとしたようだが、彼はわずかに開いたドアにしがみついた。
「愛琉ちゃん」
「ぼく、看病するよ。お義兄ちゃん、大変なんだ。ぼくもお義兄ちゃんのこと看病する!だってぼくの大切なお義兄ちゃんだもん」
愛琉は我が物顔で姉夫婦の部屋に踏み込んだ。そしてフロートマットに上半身を乗せて尾部もぐったりしている半魚人を見つけた。リンゴジュースのパックから伸びるストローを咥えているが吸っている様子はない。
「ふぇえ……お義兄ちゃん。死なないでよぉ……」
答えるように尾鰭がぴち……っと動く。
「お義兄ちゃん、今日は遊べないから静かにしていてあげてね。すぐ良くなるようにお姉ちゃんも頑張るから」
「う、うん。でも、ぼくはいいんだ。ただ、お義兄ちゃんが可哀想だから……」
弱った義兄の姿を目の当たりに爛々と興奮している弟の顔は姉には見えない。
「お姉ちゃん、ちょっと病院に連絡してくるから……お義兄ちゃんのこと、頼むわね」
「うん!」
努めて可愛らしく返事をした。姉が出ていく。疲労の窺える目が愛琉を捉えた。
「毎日おれの精液 ミルク飲んでるのになんてザマなの?」
答える様子もなく人魚は気怠げに目を閉じる。
「毎日喉奥ガン突きされて何も食べられなくなっちゃったんだ?ナイーブだな。今日も飲む?お食事だよ」
深い息遣いが聞こえる。弱った姿に興奮した。
「あの姉貴 、義兄さんのこと病院連れて行く気でしょ。義兄さん犯したらバレちゃうかもね」
まったく義弟を脅威ともしなかった人魚はぎょっと目を開いた。
「おれのちんかすが義兄さんの糞 孔に残ってさ。でも糞便 孔火傷したら、また糞詰まりになって、おれと姉 さんの前でむりむり糞ひり出せばいいんだもんね。きゃはは」
話を聞いているだけで疲れたのか魚類の混ざった義兄は息遣いを荒くした。
「そんなの嫌でしょ。嫌じゃないならそれに越したことはないんだけどさ。オナペットの分際で病院に連れて行かれたらおれが遊べないだろ。どうせ飯食ってないだけなんだから。でも毎日おれのタンパク質飲ませてあげてるのに体調不良かぁ」
咥えているストローにリンゴジュースが通っていく。
「断熱材のスキン買ったんだ。これでおれはいつでも義兄さんを糞孔を犯せるってわけ。でも犯さないのはまだ義兄さんのことを大事に想ってるからなんだよ?お義兄さん」
陸に打ち上げられてしまった魚よろしく義兄はぴくりとも動かなくなってしまった。
「そういう態度とるんだ。本気だったんだけどなぁ」
衰弱した魚人間を前に愛琉の陰部は既に焼鏝と化していた。何度か自分で扱き遮熱スキンを被せる。
「あの姉貴 に見られたら、お嫁さん公認のオナペットだね。恥ずかしいね。お医者さんも、何で糞孔こんな開いてるんだろ?って不思議に思うね」
無防備な魚を跨ぐ。スパンコールみたいな鱗に覆われた窄まりに膜を付けた暴君がゆっくり落ちていく。楔が打たれる直前になって尾鰭が捩られる。喜悦に満ちた愛琉の目が焦らすように義兄を見た。期待どおり敵意一色に染まっている。
「きっとこれから病院行くんだもんね。あの姉貴 は過保護だから。困るよねぇ?胃の中口の中におれのザー汁残ってちゃ?」
睥睨する眼差しが逸らされた。愛琉の可憐な唇が釣り上がる。
「おれを恨むとかやめてね?お国家 様が与えた平等だとかいう人権を、自分で捨てちゃったんだから。ね?自分のせいだろ?」
ぴちち…と鰭条 が軋んだ。フロートマットの上も軋む。義兄は魚部を引き摺り、肘だけで後退る。逞しい肉体と巨大な尾鰭を持ちながら年下のまだまだ少年に怯えている。
「今日は何してもらおうかな~」
脚と脚に魚体を挟んだまま上半身のほうへ躙 り寄る。
「糞孔オナホに突っ込めないし喉まん中出しセックスもダメだもんな。ははっ、お義兄ちゃん、オナニーしてよ」
義兄は頭を振った。
「哺乳類でもないクセに立派なおっぱいついてるのに、オナニーしないんだ?」
落ちたものを拾うように下方にある義兄の乳頭を指先で繰った。こりこりとした感触がある。
『ぁ……ぅ、』
「ぷりぷり乳首だ」
愛琉は人魚の胴体に座った。義兄は左右に身体を揺さぶる。しかし残酷なヒトの指は巨大魚の上半身の二点を甚振った。それは茹でエビの歯応えに似て、それを指で感じた。いじめるとぷりぷり指から逃げていく。
「気持ちいいね、義兄さん。魚野郎のクセに哺乳類ぶって、おっぱいぷりっぷりさせて」
小さなものを親指と人差し指の間で捕らえ、糸を紡ぐように擂り潰す。
『ぁ……んっぅ、』
「もう義兄さんには要らないトコなんだから、ここも第二のちんぽにしてやるよ」
見事な胸板を乳房のように両手で寄せた。掌にぷつりと主張がある。散々に捏ね繰り回して遊ぶ。小さな芯を嬲る。擦られ慣れていないそこは赤みを持った。
『ヤ、めろ……!』
「あ、喋れるの?ははは、じゃ、お願いできるね?喉まんこ中出しセックスはやめてくださいって」
愛琉は指に唾液を付けて気触 れそうな哺乳類の名残に塗り込んだ。乳暈に押し込む。くりくりと小さな粒を四方八方に曲げる。
『あ……ぅう…………あァ………ッ』
ヒトの牝と同じように小さな切れ目から薄桃色の芽が出ている。
「胸おちんちんでイこうね。その前にあの姉貴 来るかも知れないから、イきたいなら早くイけよ」
『あ、ぁ、あァ……ムりだ、さわル、な……』
好き放題に肌粒を回す。芽吹いたものが弧を描くように勃ち上がった。別の生き物が出てきたようにそれはびくびくと蠢いた。乳頭を擂りながら引っ張る。淡い紅色の短い触手みたいなのも連動して脈打つ。
「あれ……?義兄さん、触ってほしくないんだっけ?」
後戻りできなくなるほど膨らんだものを見てから愛琉はぱっと両手を離した。
「やめて欲しいんだもんね。やめてあげる!偉いでしょ」
ぐったりして痩けていた人魚義兄の頬は赤らみ、双眸には水膜が張って、罅割れた唇にも糖蜜を垂らしたような光沢があった。
ドアが開く。愛琉にとっては良いタイミングだった。
「すぐには診てもらえないみたい。予約を入れたからもう少しだけ待っていてね?愛琉ちゃん?」
姉に擦り寄り、同情を乞う哀れっぽい表情を作った。
「お、お義兄ちゃんが、おちんちん勃たせててつらそうなの……お姉ちゃん、お義兄ちゃん、おちんちんの具合も悪いのかなぁ?」
姉の手がいくらか冷淡に愛琉を離し、夫の傍で屈んだ。人魚は自身の陰部を隠そうと身悶える。
「あなた……具合悪いの?」
彼は首を振る。妻の手が遠慮がちに額や頬、首筋を確かめる。陰部は張り詰め体外に露出したままだったがみるみるうちに人魚は市場のマグロの如く虚脱している。赤みや潤みが引き、義弟との遊戯でさらなる困憊に衰えている。
「でもとりあえずこの状態はどうにかしないとね。待っていて」
彼女は気遣わしく掌では触らず、指の背で髪を撫でた。愛琉は安らいだ顔をする怪物を忌々しげに見下ろす。姉は妻のくせに、この巨大魚と人間の化物の口と喉がどれだけ優秀な搾精器なのか知らないのだ。
「その前にまた体温を計りましょう?腋を上げて」
愛琉は新しい玩具を見つけてしまった。妻に促されて腕を掲げたことにより晒された腋窩。生唾が湧いた。ヒトの生殖器がなく、況 してや雌でもない義兄のそこはまるで哺乳類の牝の生殖器とそう変わらない淫猥な感じがある。
牡人魚の妻は体温計を挟ませ、一度その場を離れた。火水の言付けを守り異物をそこに留めている弱った怪物を舐め回すように見つめた。腋で卵を温めているようだ。母性的な幻影が陵辱欲を煽る。それでいて魚の下半身はぬらぬらといやらしく湿った交接器を垂らしている。
「愛琉ちゃん、お部屋戻る?」
戻ってきた姉はビニール袋を手にしていた。
「ううん。お義兄ちゃんのことが心配だよぉう」
「……そう」
彼女はばつが悪そうだった。夫の傍で特殊手袋を嵌めるとビニール袋の中に入っていた紙箱を開ける。ソーダアイスを思わせるブルーのシリコンが出てきた。形はソフトクリームのコーンのような三角錐に近いが丸みを持っている。魚の一部、この義兄の下半身を模したように大振りな鱗も彫られている。
「ほら、あなた……これ、人魚の女の子の模型なんですって」
早い話がオナホールだった。愛琉は顔面が歪むのを抑えきれなかった。妻から目の前で自涜をするよう言われている。おかしくてたまらない。しかし姉の前だ。姉の後ろ、しかし義兄に見えるところで陰湿な笑みを浮かべた。
『い、イい………要ラな………っ』
「駄目よ。この前だって便秘しちゃったでしょう?雄器 の原理 はよく分からないけれど、またお腹痛くしたらどうするの?」
妻は惨めな鯛焼きみたいなシリコンにローションを注入した。襞だらけの窄まりが淫らに歪み、潤滑液を滴らせる。ぶるぶると首を振り、嫌がる人魚の薄肉色にケミカルなシリコンブルーが被さった。
『ぁ……あっ、!』
「ほら、自分で動かして」
交接器を貫くシリコンホールを躊躇いがちに上下させ、手を離しかけている。しかし、やはり人魚は応じない。
「あなた?」
ぶるぶる、ぶるぶると彼は聞き分けの悪い子供みたいに首を振り続ける。
「もう……」
妻のリズムが再開する。ケミカルなブルーはくちゃくちゃくちゅくちゅと彼女の夫の生殖器の太さになり、内部の襞が捲れて絡み付くのがよく見えた。妻の手によって性的な用途のシリコンホールで扱かれ鱗の生えた腰が跳ねる。ガソリンの混ざった水の如く虹色に光った。
『ぁぅ、ふ………んっ、』
「痛い?」
しなやかな手がシリコンホールを止めた。その夫はがくがく震えて動くのをやめた人工穴を突き上げる。波を作る喉で彼が生唾を呑んだのが分かった。
「こういうこと詳しくないから、自分でやったほうがいいんじゃない?」
窶れても紅白に忙しなく変色させる人魚はただ首を振るばかりだ。異種間結婚をした妻は拗ねた夫を突き放すでもなく甲斐甲斐しい。愛琉はそれが気に入らない。
稍 あって人魚は妻の前で白い霧を噴いた。身体がフロートマットの上で弛緩する。シリコンホールを握る女の手を掴み、そこに繋ぎ止めておこうとするのだ。愛琉は得体の知れない怒りに襲われた。人の姉を奪るつもりだ。人魚の分際で。夫という立ち位置にあぐらをかく気なのだ。魚肉の分際で。愛琉は怒りに比例した劣情がメラメラと再燃した。鱗穴で発散するはずだった粘液が体内で滾っている。分からせなければならない。人魚は所詮、魚だ。人外だ。怪物だ。それが人の姉に亭主面をしている。
「愛琉ちゃん。ちょっとこれを洗ってくるから、何かあったらお義兄ちゃんをよろしくね」
「うん。ぼく、お義兄ちゃんが元気になってくれるなら、なんでもする!」
誰もが羨む美しい姉は微笑んで白雫の滴るブルーのシリコンを洗いに部屋を出た。
「おれと2人きりになりたくなかったでしょ」
激しく消耗したはずの人魚はまだヒトに反抗的な目をくれる。
「腋出せよ。腋まんこにしてあげる。魚の糞孔にぶち込まれたくないよね?」
義兄は従った。眉間に皺を寄せ腕を上げる。余計な抵抗をしてさらに厄介なことになるのを避けたのだろう。愛琉は横臥させた義兄の背中側に座り、彼の腕へ屹立を擦り付けた。完全に無視を決め込んだ人魚はされるがままだ。皮膚に陰茎の汁を付けられることにももう頓着がない。脇腹と腕に赤黒棒を挟み腰を振る。飽きると腋窩で陰茎を締め付けた。
「気持ちいいよ、義兄さん。義兄さんの腋まんこ、すごくいい。ここならいつでも中出しできるね。腋中出し。こんな卑猥な腋してたならもっと早く腋セックスすれば良かった」
襞も括約筋もないが忌々しい化物の腋を犯しているというのが非常に良い。肉棒はさらにかちかちに固くなる。愛琉は義兄を跨いで目の前に移動した。
「義兄さんの乳首カブれちゃったでしょ?おれのローションで保湿してあげる」
腋淫から胸淫に変わる。谷間を膨らんだ先端で突きながらぷくりと主張している肉粒へ向かう。小さな弾力で敏感なところを揉む。身を引こうとするのも許さなかった。片胸に透明な前戯蜜を塗り、頂 の鈴孔を塞いだりした。
「コリコリ乳首気持ちい……裏筋いっぱいぷりぷりして…………」
身を引こうとするのを押さえ付けて愛琉は悦楽の箇所に人魚の胸実を引っ掛けた。前からも脇腹と腕で情交的な自涜をする。
「気持ちいいよ、お義兄さん。どこに出す?どこがいい?あっ………」
人魚はきつく眉を寄せ、目を閉じている。
「腋……腋にびゅるびゅるすりゅ……」
愛琉は片手で腕を持ち上げ、義兄の腋を肴に手淫に耽った。
「あ、イく……お義兄ちゃんの腋まんこに出すからねっ、お義兄ちゃ……っ、腋まんこ中出しするからねっ!……あんっ」
白濁の爆撃が人魚の腋を覆った。
『ぁあ……っ』
「おれのまんこ……おれ専用のまんこだよ……?」
精液は胸へ崩れるように落ちていく。ねっとりどろどろしながら人魚の皮膚を愛撫する。満足と絶頂の余韻にたまらなくなって愛琉は義兄の腕を吸った。
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