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44.展開が急すぎる

 目が覚めた時、太陽の光の位置がおかしかった。そして尻穴がじんじんする。喉が痛い。声上げすぎである。  ふーっと息を吐いて寝返りを打った。尻がきゅんとした。  まだ何かはさまっている、という感覚はないが、腫れている気がする。今日は尻穴を休ませてもらわなければならないだろう。 「……口でしたことないな」  そういえば、とまた思い出す。安田はゲイでもないのに俺自身を口でしてくれるし、岡もしてくれる時がある。俺もした方がいいんだろうかと思うがイマイチする気になれない。 「岡も、安田のことも好きなんだけどな……」  そう呟いた時、 「僕も先輩のこと大好きですよ」 「!?」  いつのまにそこにいたのか、寝室の扉を開けたところに岡がいた。白いシャツにチノパンという姿がなんともそそる。その右手には水の入ったコップ。俺はカァッと顔に熱が上がるのを感じた。 「あ、あの……」  岡はベッドの端に腰掛けると、上半身をうつ伏せで少し持ち上げた状態の俺の背中に口付けた。 「!!」  それからコップを渡してくれた。俺は遠慮なくごくごくと喉を鳴らして飲み、コップを返した。やはり喉が渇いていたようだ。  そしてまた俺の背中に口付けを落とす。 「もう先輩が愛しくてたまらないんです。……一緒に、暮らしませんか?」 「……無理だろ……」 「安田さんも一緒に、部屋をシェアするかんじなら不可能ではないと思うんですけど」  確かに二人で住むとなると男同士でもちょっと世間の目は気になる。だが三人以上なら、仲のいい人間同士が家賃を浮かす為にシェアハウスをしているという体が取れる。 「……岡はそれでいいのか?」 「安田さんはノッてくれましたよ。僕、先輩と二人でHするのも好きなんですけど、やっぱりもう一人先輩を好きな人と一緒にするの好きなんですよね。先輩があられもなく感じてる姿、本当に可愛いので」 「っ、背中……」  岡は俺の背筋を指でツーと辿りながらちゅ、ちゅと何度もキスを落とす。なんだかぞわぞわしてくるからやめてほしかった。 「でもさ、まだ俺たち付き合い始めたばかりだろ……?」  岡は俺より三歳も下だ。そのうちもっと若くて可愛い子がいたら……とか思ってしまう。 「先輩は……僕と暮らすの嫌ですか?」  岡が不安そうな声を出した。そんな風に言われると弱い。 「んー……岡は俺のことまだほとんど知らないだろう? 俺本当にずぼらでさ、飯は作れないし、洗濯もいいかげんだし、部屋の掃除もろくにしないしで、一緒に暮らしたらすぐに幻滅されそうなんだよ」 「先輩のアバウトさは先輩のお宅を訪問した時にわかりました。僕は家事をするのは苦にならない方なので、何かあればその都度言いますよ?」 「(とも)のずぼらっぷりなんて今に始まったことじゃないだろ? 家事は俺も手伝うしな。あんまり智の行動が目に余るようならケツマン犯しまくればいいだろ?」  安田も寝室に来ていたらしい。いつのまに。 「安田は……つか、安田もそれでいいのか?」 「さすがにここじゃ狭いから改めて物件を探す必要はあるだろうけどな。俺と岡でまとめて金出して、智が家賃を払うって方法なら気兼ねもないだろうし」  なんだか眩暈がしてきた。  外堀がすごい勢いで埋められている気がする。いや、それが嫌だというわけではない。ただ展開の早さに俺がついていけないだけだ。 「でも、ちょっと早すぎないか……?」  安田がシーツを剥ぎ、俺を仰向けにした。 「今度は何が不安なんだ? 智はいつだってそうだろう?」  そう、安田が勢いでいろいろなことを成している間に、俺はいつだって二の足を踏んでいる。だから今回俺が岡を犯すと言った時あんなに驚いたのだ。 「あ」  そこまで考えて、全ての責任はやっぱり俺にあるということに気づいた。 「先輩?」 「智?」 「……前向きに検討するけど、急ぐのはやめよーな?」  苦笑して言うと、二人の顔がパァッと明るくなった。そんな顔をされたら逆らえないじゃないか。 「先輩、愛してます!」  そう言って岡が俺の乳首に吸い付く。なんでそこで乳首なんだ。 「智、やっぱお前サイコーだ!」  安田がそう言ってもう片方の乳首に吸い付いた。乳輪からちゅうううっと強く吸われるのが気持ちいい。 「あっ、なんでっ、胸っ……?」 「こういう時はHしないと」 「そうだそうだ」  なんでこんなにこの二人は気が合っているのだろう。 「し、尻はだめだからなッ!」 「はいっ! 舐めるだけにします!」 「おうっ! 薬塗ってやるぜ」  いや、そういうことではなく……。  そのまま俺は、俺の腹が空腹を訴えるまで二人に可愛がられてしまったのだった。  やっぱり早まったかもしれない。

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