「そうだ、聞こうと思ってたんだ」 「俺の髪に顔を埋めたまま話すな。こそばいわ」 「省吾の職場に、俺の友達が最近入社したかも」 「マジか？　名前は」 「綾香ミツル。この間会った時に転職先聞いたら省吾の会社だったんだ。地域的に近いかと思って」 「あっ……ま、待て！ 触るな！　アヤカ？ お前の知り合い？」 　綾香ミツル。この春にうちの職場に中途入社した女の名前だ。 　俺もいまの職場はこの春に転勤してきたばかりだから、同じ時期に入ったようなもので、まだロクに喋った事もないけれど。確か同じ歳の女だと紹介された記憶がある。特別美人でも可愛い容姿とも言えない、敢えて言えばちびっこくてどんくさそうな、まあ憎めない感じの女だと思う。 　シャツの中に入り込んできたハルの手と押し問答しながら答えると、ああやっぱりと微笑むハル。