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週末 3

「省吾からキスしてくれるの、嬉しい、もっとして」  嬉しそうにねだられると、逆に恥ずかしくなる。ハルは悪戯げに微笑み、ベッドへ行く前に一度抜いておこうかと囁いた。  完勃ちになった俺の屹立を、ハルは迷う事なく口へと含み、唾液の水音をたてはじめる。  余りの気持ち良さに目を閉じて、されるがままの俺。 (気持ち良すぎる……駄目だ、完全に骨抜きにされてんな……) 「ん、あ、ハル、放せっ、いくっ……」  身体をよじっても離してもらえず、ハルの熱い口内に吐き出してしまった俺の白濁を、ハルはゴクリと飲み込んだ。 「っ……出せって言ったのに」 「嫌だ、省吾のものは全部俺のものだ」  どこのガキ大将だ。  ハルの柔らかな髪を梳くように撫でれば嬉しそうに微笑み、それから俺の左手をとり甲に唇をあてた。  そんな仕草もまるで違和感のないハル。生まれた時から王子顔の男は違う。鼻筋の通った端正な顔に白い肌。同性の俺からみても、綺麗な顔だと思う。客観的に見れば。  長年の付き合いで培われたフィルターを通すと、尻尾振ってる大型犬にしか見えないけども。 「毎日でも会いたいのに」  俺だって……そうだよ。  心の中で呟くけれど、言葉には出来ない。俺はいつもこうだ。なんでもないことはいくらでも口に出せるのに、いざ力が入ると肝心な言葉は口に出来ない。こと恋愛に関してはそうだ。なんでもかんでも思ったままを口に出来るハルはすごいと思う。迷いがないのか、迷うものと迷わないものを瞬時に厳選して言葉に出来るのか、なんにしろT大理工学部卒の脳とは根本的な作りが違うのだ。多分。 「新しい職場、大変か」 「まあ、エリア的に激戦区だしな。出来る奴だらけだから負けらんねぇし、やるしかねぇ」 「そうか、頑張り過ぎないようにな」 「だからここに来るんじゃねーか」 「うん?」 「お前といると気ィ抜けて落ち着くし、この時間大事」  テレビを見ながら言葉を返し、テーブルの上のポテトチップスに手を伸ばしかけたところで突然身体を引っ張られ、背中からハルの胸に倒れ込んだ。 「いってぇな! 何すんだこの」  流れるようにソファの上へ押し倒されて、見上げれば満面の笑みのハルが俺を見下ろしている。  悪態をついた口を塞がれ、ああ喜んでいるのかこいつは、と気付く。 「省吾はやっぱり優しい」 「別に優しくねぇし嬉しくねぇ、てか痒くなるしやめろ」  頭の上で好きだ好きだと念仏のように唱えられてもな。  まともに相手にするのも面倒になり、ハルの身体を受け止めたまま首だけまわしてテレビに視線を戻すと、番組はエンディングに入っている。週一の楽しみだったというのに、散々邪魔をされたせいでロクに観れなかった。  むかついた俺の気も知らず、すっかり機嫌を良くしたらしいハルは俺に乗っかった体勢のまま、そういえばと会話を続ける。

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