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サビシイ 4

 意地でもスマホをとりたくなった俺は、人生でこんなに伸ばした事ないって位、腕伸ばしに全神経を注いだ。 「んぎぎ……」  あと少しなんだよ、あーマジで邪魔、ハルっ!! 「と……どいたっ!」  勝った……!  手にしたスマホの着信表示を見る前に、勢いで通話ボタンを押してしまい、そのまま耳にあてる。 「はいっ香取で」 『あ、やっとでたー、おはよーオレオレ!』  キィイィィン  不意打ちの爆音に、俺の左耳は負傷した。 「……お前かよ」  マジ出なきゃよかった。  クレームよかうぜぇ。 「朝っぱらから鳴らすな、青木」  職場同期の営業マンで、うちのマンション隣住人の青木。元気と愛嬌が取り柄の、憎めないけれどウザいキャラ独占一位を爆走中の男だ。 『ゴメンゴメン、 起きてるかなーと思ってー』  起きていたとしても限りなく迷惑だし、五コール鳴らして出なきゃ切れよ。社会人の常識だ。 『起きたら冷蔵庫になんもなくてさー。飯食いに行かない?』  そうかそうか。  コンビニへいけ。

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