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冬の夜をきみと 2
社会人一年目の冬。
赴任先の名古屋にもすっかり馴染み、仕事に追われながらも悠々自適な一人暮らしを満喫している。
「ハルがこっちに来るのは構わねぇけど、俺は次の日の土曜も午後から出勤だぞ?」
電話の向こうでそれでも行くと言い張る男は、千葉在住の、一応俺の恋人。
正直、余り実感はない。
付き合い始めたのは四月の終わりで、それから数える程しか会ってないし、ぶっちゃけ自分が本当に男のハルを恋愛対象として好きなのかと聞かれたら即答できるか自信がない。
流されているつもりはないけれど、よくわからないというのが正直な気持ちだ。
ハルの声を聞くと嬉しかったり、安心したり、たまに会えれば心臓がぎゅっと掴まれるような痛みを感じたり、ふとした夜に、会いたいと思う事もある。
友達とは違う感情、なんだと思う。
ただ、時々(いや頻繁に)感じるハルとの温度差に若干(いや結構)引き気味ってのも事実で。
何が言いたいかというと、それが今。
『金曜の夜に、仕事が終わり次第新幹線で向かうから』
「車じゃねぇの」
『新幹線なら定時であがれば二十時には着ける』
「俺が早く終わるかわかんねぇし、飲みに誘われたら少しは顔ださねぇと……」
シーン。
沈黙が恐えぇ。
『付き合って初めてのクリスマスの夜を一緒に過ごす』ということが大事なんだと散々力説されたけど、正直どうでもいい。
そもそもお前そんなキャラじゃなかっただろうと返せば、それは相手が俺だからだと言う。
意味がわからねぇ。
結局今回もハルのペースに持っていかれ、何があってもクリスマスの夜は一緒に過ごすと約束させられた。
金曜の夜に二十時待ち合わせとか、ハードル高けぇよ。
通話を切りやっと一人の空間に戻ると、俺は大きくため息をついた。
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