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冬の夜をきみと 3
◇◇◇
十二月二十三日。
目覚めるなり部屋の空気の冷たさを頬に感じ、布団を頭から被りなおす。
布団の外はやばい、寒すぎる。俺の身体が外の世界は危険だと脳に訴えている。
(出たくねぇ……)
起き上がる踏ん切りがつかずに布団の中でウダウダしていると、枕元のスマートフォンが鳴り出した。
着信表示はハルの文字。時刻は六時を回っている。
「……はいよ」
『おはよう省吾、まだ布団の中だろ』
なんでばれるんだ。この部屋に隠しカメラでもついているのか。この間こっちに来たときにまさか。
『名古屋、雪凄いぞ』
「雪? マジか」
どうりで寒すぎると思った。
つーか、名古屋にいる俺より千葉のハルの方が情報早いって、既に朝から負けてる感が凄い。地味に打ちのめされる。
『今ニュースでやってるよ。交通機関乱れてるから早目に出ないと』
もそりと布団から起き上がり、カーテンを開けて結露した窓を指でこすり、ギョッとした。
「げ」
一夜にして一面の雪景色。
視界を阻む程の雪がしんしんと降り続いている。
「ひでぇな、こりゃ。ハルが起こしてくれて助かったわ」
雪だからって遅刻は出来ない。急いで準備をした方が良さそうだ。
「そっちは?」
『寒いけど雪は降ってないよ。じゃあ、夜はそっちへ行くから』
「はいはい」
電話を切ろうとしたその時、インターホンが鳴った。
『誰か来た』
電話越しに俺より早い反応って何なんだ。
『こんな朝早くから誰だ』
「知らね。宅急便かな? じゃな」
『待て待て待て!』
何だようるせぇな。
『怪しい奴だったら困る。誰が来たのか確認してから電話を切る』
何だそりゃと呆れたものの、下手に反抗して無駄に長引くのも面倒だと思い、俺はスマホを耳にあてたまま玄関へ向かった。
再びピンポンと鳴らす主を確かめようと、モニターをオンにすると。
アップで映る、よく知った顔。
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