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冬の夜をきみと 4

「今日の予定、復唱してみろ」  雪の日の大通りは混雑に加えてノロノロ運転。事務所に到着するまで時間がかかりそうだ。俺はスケジュール帳を開き、予定を復唱していく。 「はい、A商事部長に挨拶へ言ってから、B商事へ新規のプレゼンを提案、C販売店に先日のお礼と新商品説明をして、午後イチでD店経由のユーザーへ、アフターケアに顔出し、そのあとは年始にむけて各代理店へローラー、です」 「よしよし」  大きな手が俺の頭をワシワシと撫でた。  完全に子供扱いだ。その度に、早く一人前にならないといけないと意欲を奮い立たす。 「B商事と言えばお前、事務の女性社員から言い寄られてるだろ」 「は、はい?」  ぎょっとして佐川さんの横顔を見つめる。  いや確かにしつこい姉さんがいて、会社のスマホにやたらとメールがきてうぜぇなと困っているけど。誰にも言ってないはずだ。 「あっちの営業から偶然聞いたんだ。会社絡みの面倒は俺にちゃんと言え。個人で解決しようと思うな」  いつになく厳しい物言いの佐川さんにしょんぼりした俺は、モゴモゴと謝罪の言葉を口にした。 「……すみません」 「あー、しょげるなよ。俺を頼れって事。仕事が絡むと女は意外と面倒だからな」  はあ、と力無く相槌を打つと、佐川さんは楽しそうに笑った。 「まあ、始めの頃に比べたら、懐いてきてくれたかな」 「え?」 「無愛想で、うんともスンとも笑わねぇ、客の前でも愛想笑いひきつってるし、これから大丈夫かと心配したもんだけど」  あ、俺の事か。 「お前が笑うようになってくれて、正直一番喜んでいるのは多分俺だ」  そんなに酷かったのか俺。  あんまり自覚してなかっただけに、軽く凹む。

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