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幸せになる方法 (社会人四年目:節分)1
金曜日の夕方。
事務所へ戻り席についたところで名前を呼ばれ、振り返るとCAD担当のヨーコさんが立っていた。
「香取くんお帰りー。お腹空いてない?」
「腹?」
夕方だし勿論腹は減っている。
「節分イベントの景品が余ったの。良かったらどうぞ」
満面の笑みで差し出されたものは、福豆一袋と小さなパックに入った太巻。
途端にぐぅと鳴り出した自分の腹を押さえながら、素直に頂く事にした。
「いただきます」
「ついでにお願いがあるんだけど」
お願い?
「これ被って、写メ撮らせてー!」
恥じらい風味な振りをしながら突き出されたのは赤鬼のお面。
「げ、やだよ」
速攻返した俺の言葉は他の女達の黄色い声であっさり掻き消された。
「きゃあ、見たい見たい!」
「ヨーコさん、それいい」
「私も撮る!」
アホか。
これだから女達の群れは嫌いなんだよ。キャアキャアとうるせぇな。
「青木にでも被らせたらいいじゃないスか」
お面を突き返し答えると、もう被ってるよと青木の声。
振り返ればスーパースマイルで青鬼のお面を頭に乗せ、ポーズを決めているアホ木。
この事務所、揃ってアホだ。
結局、女社員達の猛烈な押しに負けてわけのわからねぇ撮影会をさせられ、ウンザリした俺は早々に退社し帰宅した。
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