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幸せになる方法 おまけ

 おかしい。  絶対おかしいだろ。  風呂上がりの脱衣所で俺は考えていた。  風呂に入る前に置いておいた着替えが一式消えている。  かわりに何だこれは。  何食わぬ顔して鎮座しているトラ柄のローライズボクサーパンツ。  鬼パンか?  鬼パンなのか?  背後から視線を感じ振り返ると、ほんの少し開かれた脱衣所の扉の隙間から、ハルがこっそり覗いていた。  いやこっそりじゃねぇし。バレバレだよ。  目があうなり扉がしまった。  いやバレてるし。 「はかねぇよ?」  聞こえるように声を上げると、再び扉がほんの少し開き、ハルの片目が見えた。 「大丈夫、似合う」  アホか。  大体どんな顔して買ってきたんだこれ。 「お前がはけよ。てか俺の寝間着とパンツ返せ」 「一回だけ履いてみて。一枚撮ったらすぐ脱がすから」 「……お前マジで色々日本語変だぞ」  アホだ。  事務所の奴等よりこいつのがよっぽどアホだ。  ブルリと悪寒が走り、ヘックションとくしゃみがでた。  う、寒い。このままでは風邪を引く。  一向に折れる気配のないアホとやりあうのも面倒になり、溜め息をついてピチピチなトラ柄パンツを身につけ、バスタオルを肩からかぶり脱衣所を出ると。  待ちかまえていた変態ハルに、寝室へと一直線に拉致られた。 <終>

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