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幸せになる方法 8
◇◇
夜。
風呂から上がったハルはリビングに戻るなり声を上げた。
「あっ、福豆あけちゃってる」
「何だよ、ビールのつまみにちょうどいいじゃんか」
缶ビール片手に振り返ると、豆まきしようと思ってたのにとぶつくさ言いながらハルも冷蔵庫から缶ビールをとりだし、もそもそとこたつに潜りこんできた。
「豆まきはしないっていっただろ」
「あっ、もう半分もなくなってる! 省吾、歳の数より食べすぎだよ」
言いながらハルも豆をつまみ上げ、口に放り込んだ。
「確かにビールに合う」
「だろ」
美味そうにビールを煽るハルを横目で見ながらふと気付く。
「あ、そうだうちにも鬼が居た」
「ん?」
「ハル、口開けろ」
素直に開いた口の中へと、豆を数粒放り込む。
「鬼は内」
ボリボリと豆を噛み砕きながら、何それと眉間に眉を寄せるハル。
「お前たまに鬼とか悪魔出てくるからな。でもそれもお前だし、外に出ていかれても困るから内に封印しとけってこと」
俺の考えが可笑しかったのか、ハルは声を上げて笑い出した。
「省吾と居ると、一生飽きないな」
「まぁ居るしな、一生」
軽く言葉を返し豆を口に放り込んだ瞬間、突然身体ごと引き寄せられてビールをこぼしそうになった。
「危なっ! お前、急にひっぱんじゃねーよっ」
「省吾は俺の福なんだ」
「は、何だそりゃ」
「だから絶対離さない、誰にも渡さない」
「わかったから離せって、ビールがこぼれる」
ぐるりとハルに顔を向けると、もうこれ以上口角上がらないだろってくらい、嬉しそうに目を細めて微笑むハルがいた。
だからその顔は反則だろ。
惚れるしかない。
鬼は内。
福も内。
今はこのまま。
ふたりで笑えたらいい。
<終>
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