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第6話

 彰吾は本当に毎晩やってくる様になった。  時間はまちまちで、比較的夜の早いうちに来る事もあるが、大抵は深夜になってからだった。  今夜も潤は浅い眠りに落ちた所でインターフォンに起こされた。寝間着で出迎えると直ぐにキスされ、抱き上げられてベッドインとなった。決まり事とでも言うかの様に眼鏡が取り上げられる。いつの間にかそれはセックスの合図となっていた。 「ほら、もっと腰落とせよ。半分も入ってねぇぞ?」 「でもっ……これ以上は、無理ですっ」  彰吾の腹を跨ぎ、そそり立った楔を自分で秘所へ導きながら潤は首を左右に振った。彰吾の上にペタンと座り込んでしまえばいいのだが、楔の刺激が怖くてなかなか果たせない。躊躇していると彰吾が小さく舌打ちした。 「しょうがねぇな。俺の胸に両手をつけ。行くぞ?」 「え、ちょっと! 待ってくださいっ! ァァァッ!」  彰吾に腰をガッシリと抑え付けられ、下から激しく突き上げられる。肉のぶつかり合う音を聞きながら潤は仰け反って喘いだ。  彰吾の視線を全身に感じながら貫かれ、同時に前も扱かれると羞恥と悦楽で何も考えられなくなる。そして純白の欲の証を迸らせてから後悔するのだ。 「す、すみません。私、また貴方に掛けてしまって……」 「悪いと思うなら舐めて綺麗にしろ。今日は顔まで飛び散ったぜ?」  ニヤリと笑う彰吾の言葉に赤面しながら潤は小さく頷いた。  彰吾の腹に座ったまま頬に唇を寄せる。首筋や盛り上がった胸、引き締まった腹に舌を這わせて白濁を舐め取って行く。全てを舐め終えると褒美のキスが貰えた。 「お仕事は進んでいますか?」  彰吾の胸に身を預け、逞しい腕を撫でながら潤は尋ねた。会話を交わしながら潤は彰吾の治療を始める。両手で疲れが溜まっている場所を探し、それを吸い取っていく。充分な診察時間を取れない時、潤は情事の合間に彰吾の治療を行っていた。 「お蔭様で順調だ。新しくオープンするカフェの設計なんだよ。コンセプトは『街の中のオアシス』だ。一年中、緑と花の溢れるカフェにしたいってのが依頼主の希望だ」 「素敵ですね! 緑に囲まれて自然の風を感じながら紅茶を楽しめる……。そんな場所を造るなんて素晴らしいお仕事です」 「そうか? 求められる物を希望通りに造るだけだぞ?」 「貴方が造ったお店で沢山の人が素敵な時間を過ごせるんです。依頼された方だけではなくて、大勢の方を満足させられるお仕事ができるなんて羨ましいです」  潤は彰吾の首に両腕を巻き付けながら告げた。凝りの酷い首筋を解そうとしたが出来なかった。彰吾の両手が潤の背中や体のラインを撫で始めたのだ。それは情事の続きを求めている合図だった。毎晩会っているというのに彰吾は一度だけでは満足せず、潤が気絶するまで行為を止めようとしない。今もまだ、彰吾の楔は潤の秘所に埋められたままだ。 「褒められて悪い気はしねぇが俺が本当に造りてぇのはもっと違う物なんだよ」 「どんなものなんですか?」  潤は身を捩りながら尋ねた。情欲を煽る様な彰吾の手の所為で落ち着かない。意識を両手に集中させてようと思うのに全身を撫で回す淫らな手に翻弄されてしまう。 「俺が造りたいのは『空』だ」 「空、ですか?」 「あぁ。満天の星が輝く大空を造りたい。誰もが見惚れる空を造るのが俺の夢だ」  彰吾に促されて潤は身を起こした。体を繋げたまま体の位置を入れ替える。今度は潤が仰向けになった。 「小学校一年の時、親父の仕事の都合で引っ越したのは話したよな?」 「えぇ」 「引っ越しの前の晩に見上げた星空がとてつもなく綺麗だった。俺を虜にするくらい綺麗だった。今でもその空が忘れられねぇんだ」 「……貴方がこの街に戻って来た理由のひとつがもしかして……」 「あぁ。この街に戻ればあの空をもう一度見られる様な気がしたんだ。例え見られなくてもこの街でならあの星空を造る事ができる。そう思ったから俺は帰って来た」  夢を語る彰吾を見上げながら潤はニッコリと笑った。夢に向かって力強く前進する彰吾の姿はとても魅力的だった。 「貴方ならきっと造れます。もっともっと素敵な星空を造る事ができますよ」 「潤に言われるとできそうな気がするな」  彰吾の唇が泣きボクロに触れた。そのまま耳の方へ滑り、耳朶を軽く挟む。 「夢を叶える為にはお前が必要だ。俺の為に特別治療を続けろよ?」 「彰吾さん、彰吾っ、さ……ァァァッ!」  彰吾の乱暴な愛が再び潤の体を襲った。  体の中で熱い楔が荒れ狂う。繰り返し身を穿たれ、体の奥に何度も熱を注ぎ込まれる。  体の内側から彰吾の色に染まって行く。甘い囁きに洗脳されていく。会う度、体を重ねる度に身も心も彰吾の物になっていく。もう完全な虜と言っても良かった。  飽きる事無く体を重ねて想いを確かめ合い、お互いの顔を見詰めながら朝を迎える。  毎夜の逢瀬は二人にとって欠かせない物となっていた。

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