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第3話

 差し込む朝陽の眩しさに俺は目を覚ました。  体中が痛くて、腰から下は重怠い。昨夜、俺は尻で完全にメス堕ちして善がり狂った。そのせいだ。  自己嫌悪の息を一つ吐き、俺は隣で眠る相手を見おろした。  思わず声を上げそうになる。隣で眠っていたのは、息をのむほど美しい外国人だった。  褐色の肌に豊かな黒髪、長い睫を伏せて眠る顔はまだ若い。逞しい体つきと品のいい端正な様子からして、とてもこんな売春宿に来る必要があるとは思えない。  こんな、と辺りを見回した俺は、ぽかんと口を開けた。  昨夜はろくに見もしなかったが、部屋は唖然とするほど豪華だった。寝具は絹、壁には豪華な装飾、花瓶には山盛りの大輪の花。  壁をぐるりと見回していた俺は、厚い額縁に飾られた絵に視線を止めた。それは日本人を描いた絵だった。この部屋には不似合いな、羽織袴姿の若い日本人が額の中に収まっている。  ベッドを降りてそれを近くで見ようとした俺は、手を掴まれて制止された。相手が目を覚ましたらしい。 「……セイヤ」  目覚めた男がどきりとするような優しい微笑みを浮かべていた。狼のような琥珀色の瞳が、浅黒い肌の色の相まってすごく野性的だ。  印象的なその瞳に視線を奪われていると、彼は指に優しく唇を押し当ててきた。  ――恭しく口づけされた俺の薬指には、でかい宝石の付いた金の指輪が嵌まっていた。  ああ、一体どこから説明しようか。  事の発端は父に送った一枚の写真だ。  成人式の時の記念写真に『養育費をありがとうございました』と一言添えて送った物だ。父はそれをこの南国の王子に見せた。異国の王子はそれを見て、一目で俺を気に入ったらしい。  俺を欲しがったこいつと、治療費が必要だった俺。利害が一致する二人の橋渡しをした父も、実は人身売買まがいの契約だと思っていたそうだが、あの時の書類は婚姻届だった。  俺はこの男、ザラーン王子と結婚して、この国へ嫁入りしたことになっていたんだ。  あれからすぐ誤解も解け、俺たちは甘い新婚生活を送っている。  お袋の病気も、世界的な名医に執刀されて、今はリハビリの最中だ。ネットの動画では元気そうだった。  文句なしのハッピーエンド……のはずなんだが。 「ザラーンッ……!」  後ろから押し込まれるぶっといナニに、俺は悲鳴を上げた。王子様育ちのこいつのセックスはいつも強引だ。  極太の凶器で奥を責められると、すっかり慣れた俺の体はすぐに感じ始める。なのに、俺のペニスには相変わらずのリングが嵌まっていてちっとも射精できない。 「外せ、よ……ッ!」  新妻調教用のこのリングは一旦勃起すると抜けやしない。外してくれといくら頼んでも、体で覚えるまではダメの一点張りだ。 「セイヤ、メスイキして」  爽やかな笑みを浮かべたザラーンが腰を大きく動かした。  あ、あ、それ駄目! そこは……! 「あぁ!……メスイキする、から!」  もうリングなんてなくても、メスイキするって知ってるだろ! 「くそ……!」  波のように襲いかかってくる射精感に俺は悪態をついた。  尻の奥から湧き上がる絶頂は俺を愛玩奴隷に変えてしまう。自分から尻を振って前立腺を擦りつけ、でっかいのの先で奥を抉らせて悶え善がる。  もうダメだ……! 「ぁ、あーーッ!」 「セイヤ!」  俺が昇りつめるのと同時に、ザラーンが熱い精液を注ぎ込んだ。俺の射精を制限しておきながら、王子様は満足そうな息をついて俺の背中に突っ伏した。  まだ続く余韻に脱力する俺を、ザラーンは背中から抱きしめた。  頬にキスをして、片言の日本語で愛を囁いて、俺の乳首を指で抓む――。  あ、尻の中のブツがまた勢いづいてきた。まったく、絶倫め! 「待て、ったら!」  叫んでも拒んでもお構いなしの抜かずの二発目が始まった。このデカいのでガンガン掘られると悪態さえ吐けなくなる。ああ、もう、腰から下が溶けちまう、勘弁してくれ……! 「セイヤ、愛してる」  パンパンパン、と肌を打つ音を響かせながら王子様が流暢な日本語で愛を告げた。  卑怯だぞ! 「……俺もだよ、くそッ!」  やけくそで返しながら、俺は今日も甘くてハードな新婚生活を満喫するのだった。

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