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10 恋人までの道

 それから何度か智から連絡をもらった。  互いの仕時間が合わないせいで、まだ二回しかデートはできていない。  それでも積極的な智のアプローチのおかげで、自信のない蓮二でも流石に好意をもたれている事を実感することができ、満更でもない気分だった。  そもそも最初に一目惚れをしたのは蓮二の方。それなのに智から「実は俺、蓮二さんに一目惚れしたんだ」と告白されても「そっか」としか伝えることができないでいた。  あの時あんなことをした仲なのに、改めて「友達」として友情を深めていくことに蓮二は焦ったさを感じてしまう。智の記憶がないせいで、手がそっと触れただけで慌てて離れる始末。手を繋ぐどころか、勿論キスだってしていない。  智は「段々と俺のことを知ってくれればそれでいいから」と優しく言う。段々もなにも、あの夜に舌を絡めるいやらしいキスだって、裸で抱き合い蕩けるように欲を吐き出し求めあったり、智のあの情欲に溺れた表情だってもう知っている。思い出すほど蓮二は内心複雑でもどかしい思いでいっぱいになった。  意外にも積極的な言動とは裏腹に慎重にことを進める智と、なんなら今すぐにでもホテルに行ってやることやったって構わないと思いつつ何も言えないでいる蓮二のすれ違いが、その後一年にも及ぶなんて智はともかくこの時の蓮二には想像すらできなかった。  そうして晴れて両思い……  主に智がそれに気がつき、二人が「友達」から「恋人」として交際をスタートさせるのは、まだまだしばらく後のお話── end

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