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第1話

「自信ないよ‥。だって、最後までしてくれないんだよ?そんなことってある思う?」 「普通はないと思うけど‥、だっていい人なんでしょう?」  誰の声?と考えて思い出す。アリサさんと、‥もう一人は友達か?  昨日は年上で俺を可愛がってくれるのアリサさんと会って、食事をして、そのまま彼女の部屋に来た。もちろん来たからにはセックスして‥それから俺は寝ちゃったらしい。  広めのワンルーム。ベッドの部分を仕切るカーテンは閉められ、部屋の明かりが漏れている。友達が部屋に来ているのかと思ったけれど、どうやら電話をスピーカーにして話してるみたいだ。 「新堂さんはいい人だよ。本当に優しいし文句つけるなら、優しすぎるくらいで‥、でもさぁ‥」 「ユカコのこと、大事にしてるんじゃないの~?」 「大事にしてたらさぁ、手出して来ないと思わない?途中まではするの!なのに入れてくれないんだもん‥」  あ~聞いちゃいけないやつだ‥と思いながら、おもろそうな話に聞き耳を立てる。所詮好奇心には勝てない。 「大事にしてると思うけどなぁ‥。違うなら、EDとか?」  EDだろ、絶対。途中までで入れずに終わらせるなんて、そんなの俺ならあり得ない。勝手に心の中でツッコミを入れる。 「え~‥だって、まだ30前だよ?そんなことある?」 「わかんないじゃん。ユカコから迫ってみたらいんじゃない?」  いいなぁ。女の子から迫られるの大好き。恥じらう子も可愛いけど、俺はやっぱりアリサさんみたいなサバけた積極的な人の方がいい。 「それもやったけど‥、押し切られちゃうっていうか‥‥」 「強引なの?」 「ううん、ちがう‥。すっごく優しい‥、それですごく、上手なの」  しゃべりながら、さっきまでと違う恥じらいみたいな、自慢が混ざった声音になる。 「いいじゃん!‥て、最後までしないのに?」 「そうなの。最後までしないのに、すっごい上手なの‥」 「え、どんな?どんな?」  あ、やっぱアリサさんそこの所気になる?気が合うね、俺も気になる! 「なんか、キスだけでとろけちゃうっていうか、触るのもすごく優しくてね‥。あれ?って思っているうちにイかされちゃうの」 「えー、そんなに??優しいだけで?盛ってない?」  半信半疑のアリサさん。わかる、その気持ち。そんなに簡単にイかないって。 「ホントだよぉ。キスに夢中になってるうちに、するするっと脱がされて、触られるの気持ちいいとか思ってるうちに、あー、もうダメってなっちゃうの‥」 「それは、ユカコが感じやすくてエロいって話?」  イイネ、イイネ!エロいオネエさん大好き。 「違うってぇ~、私は普通だよ!今までそんなん言われたことないし‥。時間はそれなりにかかってるんだけどさぁ、手でされてるだけでも他の事考えられなくなっちゃうんだよ。あんなの新堂さんが初めてだもん」 「欲しくなんないの?」 「それがね‥、そんなの考えられない位気持ちよくしてくれるの‥」 「そうなんだぁ‥。いいなぁ‥」  アリサさん、羨まし気な声が本気モードだよ?  彼氏じゃないけどさ‥そんな事言われたら、ちょっと妬けちゃうかも?っていうか、もしかして俺って下手なのか!? 「ほんと、すっごい気持ちいいの‥」  ユカコさん、若干声がエロくなってる‥。 「え~‥そんなに気持ちいいなら私もやってみたいなぁ。」 「ダメダメ!アリサは他にいるでしょ!今は彼氏いないの?」 「彼氏~?彼氏はいないよ。今は仕事も忙しいし、楽しいし彼氏はいらないな」  彼氏じゃないはいるけどね~。俺はアリサさんに囲われてるわけじゃないけど、野良猫が餌をもらってるようなものだ。食事代も、ホテル代も、連れ込まれる部屋もアリサさんのだ。  アリサさんには気に入られているけど、餌をあげてるのは多分俺だけじゃない。もしかしたら餌もらってるのもあるかも?気にならないから詳しくは知らないけど。俺の方だって一番会うのはアリサさんだけど、他の女の子とも適度に遊んでる。  うだうだと、入れなくても気持ちいいセックスってどんなだろうな、って考える。今、俺のしているセックスっていったら、入れなきゃ話にならない。むしろ、お姉さん達は入れてガンガン突いたら気持ちよさそうだ。入れなくてもイケルなら、俺がしてもらってもイケるのかな‥なんて、禁断の扉か?  やべ、さっきシタばっかりなんだけどな‥。アリサさん戻ってきたらもう一回やれるかな。  少し前、眠る前まで抱いていたアリサさんの感触を思い出して、そっとカーテンをめくり「起きてるよ」と知らせて、催促をする。  アリサさんと2度目を終えて、そのまま寝ちゃったアリサさんを起こさないようにそっとベッドを抜け出し、シャワーを浴びる。さすがにさっきまで寝てたし、まだ眠くない。  それにしても、女の子ってのは案外明け透けなんだよな。ちょっとだけ見かけた事あるけど、ユカコさんは姉御的なアリサさんと並ぶとふわっと妹系の清楚っぽい人だった。その人でも、相手は彼氏とは言え自分から襲ったことあるんだもんなぁ~。女の子ってみんなエッチ好きだよな。何年か前のピュアな俺だったらガッカリしちゃうかも。おかげで今は俺も遊べているんだけど。  それに、ユカコさんの恋人っていう新堂さん‥どんなセックスするるんだろ?入れなくてもイカされちゃうってどんな感じなんだろう?  積極的な女の子から攻められたことはある。押し倒されて、キスされて、脱がされて、身体にキスされて‥でも、それだけでイキそうになんてならない。気持ちいいけど、ちょっとくすぐったい方が勝つくらいだ。  それからフェラされて、入れられて‥で、やっとイクのが常だ。  なのに、触られて、手でされて、ちんちん入れずに入れるよりも気持ちよくイクってどんなだろう?  ムクムクと首をもたげた好奇心に、頭の中がいっぱいになる。  最近はセックスに慣れちゃったのか、やれば気持ちいいんだけど、なんだかもう「いい汗かいたな。おつかれさん!」て感じなのだ。そんなんじゃなくて、何も考えられなくなるセックスってどんな感じ?俺も新堂さんとしたら、そんな感じが味わえるんだろうか。  禁断の扉だな‥開けちゃ駄目なやつだ‥と思い、ハタと気づいた。  ――あれ?大丈夫なんじゃね??  男相手にスルので一番のネックは【イレラレル】ことだ。えっちは大好きだけど、まだ尻の穴は死守したい。  その点、新堂さんなら入れられる心配はない。なんてったってユカコさんに入れることがないんだから、絶対にED。もしくは入れられない何かの事情があるはずだ。  それから、相手に奉仕するのも避けたい。男のちんちん触るなんてゴメンだし、フェラなんてもっての他。だけど、ユカコさんの話ぶりからすると新堂さんがリードして、女の子はマグロでいればいいみたいだった。  新堂さんは多分、感じてるのを見るのが好きなタイプ。だったら俺が奉仕する必要はない。  まあ後は、本気になられたら困る。けど、新堂さんはユカコさんと付き合ってるんだから、俺に本気になるはずがない。そもそも、男同士はノーカウントだ。  どんどん『新堂さんとしてみたい』と思える。  新堂さんとしたら、次のステージに行けそうだ!  実は新堂さんに会った事もないのだけど、最後には「新堂さんとしたい」とその事で頭がいっぱいになっていた。

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