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※第9話⑤
「幹斗、kneel . 」
交互にシャワーを浴び、由良さんが俺の髪を乾かした後の、その言葉がプレイ開始の合図。
普段の彼からは考えられない冷たく支配的な声音に、身体が反射的に従った。
プレイの時だけ発される冷たい声音、呼び捨ての名前、氷のような視線。その全てが、狂おしいほどに俺を支配する。
次は何を命令されるのだろうか。期待と恐怖にひどく高揚させられて。
もし命を差し出せと彼が命令したならば、喜んで差し出すかもしれない。
これはそのくらい絶対的な服従で、しかも俺は彼に命すらも握られていると思うと、本能的に気持ちがいいのだ。
「シャツを上まで捲って。」
指示に従い、全て脱ぐわけではなく、シャツを捲って肌を晒す。この行為は極めて恥辱的だ。そのうえ押さえ続けていなければ落ちてしまう。
「今日から、ここで気持ちよくなれるようにしようね。」
そう言って、由良さんは俺の胸についた二つの突起を指さした。
「えっ…?」
「幹斗はもうすでにここで感じるけど、これからはここだけでイけるようにしてあげる。」
続けて、えっちな子だもんね、と耳元で囁かれ、羞恥で顔が真っ赤になる。
それに、嘘だそんな…。イくって、だってそういうことでしょう…?
少し不安になりながら由良さんを見上げると、彼の手にはなにかシールのようなものが握られていた。そう、子供が虫に刺された時に貼る丸いシールによく似ている。
「これはね、肩とかに貼って、簡単に針治療ができるシールだよ。ほら、小さく針がついているでしょう?」
確かに、よく見るとシールの中央に1mmほどの長さの細い針がついているのがわかった。
これをどうするのだろう…?
「今からこれを、幹斗のココに刺すからね。これを刺して何日かしたら、服が擦れただけで感じるくらい、敏感になれるよ。」
由良さんの言葉に、ぞっとした。
ごく小さいとはいえ、針を胸に刺すだなんて。そんな、怖い。
「怖い?」
怯えていると、由良さんが尋ねてきた。相変わらずの冷たい声。
怖いに決まっている。ピアスすら開けたことがないのに…。
でも、由良さんに与えられる痛みなら…。
「いい子。」
胸を反らし、由良さんに突起を差し出すような格好をすると、由良さんは少し優しい声で褒めてくれた。
だんだんと針が右側のそこに近づいてくる。
…こわい。
「あっ… 」
怯えるあまり身体から力が抜け、シャツを手放してしまった。こうなるのは2回目だ。
由良さんがぽんぽんと腿を叩く。1回目の時と同じ、お仕置きの合図。
「自分でお尻を出して、お願いしますって言いなさい。」
「ごめんなさい… 」
厳しい口調で言われ、由良さんの膝にうつ伏せになり、ズボンを下ろす。
「ごめんなさいじゃなくて、お仕置きしてくださいでしょう。」
こんなお仕置きを強請るだなんて、そんな、はしたない…。
泣きたくなったが、きっと泣いても由良さんは許してくれない。
「…お仕置き、して、ください… 」
自らの恥ずかしい部分を晒した上で、さらにこんなことを口にするなんて…。羞恥でおかしくなってしまいそうだ。
「いいよ。」
この後もあるから五回にしておこうね、と由良さんが言って、今回も声に出して回数を数えさせられる。
「…ありがとうございました。」
お仕置きに対して礼を言わなくてはならないと教えられたのは2回目のプレイの時だった。あの時は服の上から緊縛されていて、軽い鞭打ちだったけれど。
「どういたしまして。」
言いながら、由良さんは俺のズボンを戻し、さらに俺を由良さんの上に座るような体勢にさせる。
戸惑っていると、そのまま服が捲り上げられ…
「お仕置きできたからご褒美だよ。」
次の瞬間、ちゅ、と音を立てて唇を塞がれた。
「んっ…、ふぅっ…ぁっ… 」
由良さんの舌が侵入し、口内を生き物のように蹂躙していく。歯列をなぞり、上歯茎と喉の間の、柔らかい部分まで犯される。
苦しくて、気持ち良くて。
たまらず声が漏れた。
「ぷはっ…!!」
由良さんの唇が離れ、それを惜しみながらも身体は新たな空気を求めて大きく吸い込む。
…あれ、なんか変な感じが…。
胸のあたりに違和感を覚えて、見ると突起の部分に先程のシールが貼られている。
「ね、痛くはなかったでしょう?」
確かに、キスに夢中でなにも感じられなかった。しかしなんと言うか、シールでその部分だけ隠すと恥部を強調しているようで恥ずかしい。
「ぁっ…// 」
由良さんの親指の爪先でその部分を緩く引っ掻かれ、声が漏れる。
「2、3日おきに自分で貼り替えて、毎日つけておきなさい。あと、この部分への刺激は普段避けるように。できるね?」
「はい。」
もちろん自信はなかったが、由良さんの命令なら従わなければならない。
「じゃあ次は… Strip . 」
ああそんな、強いglareを発されたら…
身体がびくんと震える。
俺は黙って全ての衣服を脱ぎ、そして再び由良さんの足元に跪いた。
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