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※第9話⑥
由良さんがポケットから何かを取り出したかと思ったら、collarに取り付け始めた。
collarから紐が出ていて、その先に持ち手があり、その持ち手を由良さんが握っている。
リードだ。
まるでペットみたいだと思いながらも“由良さんのペット”という立場に興奮する自分がいて、浅ましさに絶望したり、どきどきしたり、感情が忙しい。
「ベッドまでお散歩しようか。」
ここからベッドまでは、2m程度の距離。そこまで歩こうと立ち上がろうとすると、きついglareを放たれた。
これは“だめ”のサイン。
ではベッドまで、どうすればいいのだろう。
「今幹斗は犬だよ。どんな風に歩くの?」
がっかりしたような声で言われ、わからないことに絶望したが、その後苦しくない程度にリードを引っ張られ、理解した。
恥ずかしいけれど、するしかない。
手を床につき、四つん這いになって、四つ足で歩く準備をする。
「Good Boy , 幹斗。」
よくできました、の言葉に、頭がふわふわとする。屈辱的な姿を晒し、人としての尊厳を奪われたという事実が、なぜだかとても気持ちいい。
ベッドの方へ歩こうとすると、リードが逆方向に引っ張られる。
「だめだよ。勝手に動いちゃ。」
由良さんはキッチンの方へと俺を連れて行き、何故かラグが敷かれている(普段は敷かれていない)玄関で、一旦足を止めて。
そしてあろうことか、鍵を開けた。
「今誰か入ってきたら、見られちゃうね?
…こんな風にされて、尻尾みたいな大きいの、お腹に貼り付けて興奮しちゃってるところ。」
「…っ!!/// 」
その言葉で、今自分の置かれている状況を見つめ直し、足腰が震えて体勢が維持できなり、その場にうつ伏せてお尻を突き出す姿勢になる。
恥ずかしい。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
だって今俺は、由良さんにこうされて、興奮して自分の雄をお腹に貼りつくほど勃たせてしまっているのだ。
こんな犬みたいな格好で、恥ずかしい命令ばかりをされて。
もし本当に由良さんが言うように誰かが間違ってドアを開けてしまったらどうしよう…。
身体中がブワッと熱くなる。穴があったら入りたい。
「!!??」
ぅー、とその場で呻いていると、今度は何かが後孔に触れた。
「ぁっ…んっ…!!///」
自分のものとは思えない声が出る。
グチュグチュとナカを掻き回すそれが由良さんの指だという理解は、後からやってきた。
「…あれ、ちょっと柔らかいね?自分でほぐした…?」
続いて耳のそばでささやいたのは、どうしてかひどく冷たい声。
しかも、風呂場で準備をしたことまでバレている。さらに恥ずかしい。
穴がなくても自分で穴を掘って埋まってしまいたい…。
「うーん、でも“これ”が入るにはちょっと足りないな。」
“これ”ってなんだろう…?
床に押し付けていた顔を上げ、彼の方を見る。
由良さんの手に握られていたものは、ふわふわの尻尾のようなものがついたプラグだった。
「これが入るくらい、自分で解してごらん。」
何か怒っているのだろうか。由良さんの声は不機嫌で、その命令には絶対に従わなければと本能が警笛を鳴らしている。
「…はい。」
人前で自分のそこに指を入れるだなんて、絶対にいけないことなのに、本能は命令に従うことを選んだらしい。
由良さんがローションを絡ませてくれた右手を、恐る恐るその場所へ伸ばす。
…大丈夫、さっきもお風呂でできたじゃないか。
人差し指を、その場所にゆっくりと挿れていく。
「だめだよ、幹斗。僕にしっかり見えるように、Present . 」
追い討ちをかけるように、針のように鋭いglareとともに、絶望的なcommand が放たれた。
特に指示がない場合“Present”は、仰向けで四肢を浮かせ、性器や腹部を晒す格好をさせるcommandで、今裸の俺がその姿勢を取ればどうなるのか、自分でも想像がつく。
…でも…。
今は由良さんの期待に応えないと。
心臓がうるさい。それは恐怖によるものなのか、羞恥によるものなのか、それとも…。
全身を震わせながら、ラグに仰向けになる。
大切な部分を隠したいのを必死に我慢して、震える手足をなんとか持ち上げて。
…ああ、これでは先程シールを貼られた胸までしっかりと晒されてしまう。
あとは足を開けばいい。由良さんに恥部を見せつけるように、大きく。そうしたらもう、指をナカに挿れるだけ。
それだけ…
心の中で何度唱えても、いくら本能がCommand に従いたいと思っていても、理性が邪魔をして足を広げることができない。
…こんなにも由良さんに従いたいと思っているのに、どうして。
…俺は何を躊躇っているのだろう。
依然として冷ややかなglareを放つ由良さんの瞳を、伸べられるはずもない助けの手を求めてじっと見る。
今日はもうすでに一つできなかったのに、これもできなかったら怒られてしまうのではないか。
…せっかくパートナーになったのに、捨てられてしまうのではないか。
怖い。
突然、どうしてかひどい絶望感に襲われた。
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