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※第9話⑦

嫌、やめて…。 いっそもう、セーフワードを叫んでしまおうかと思う。 …けれど、それをしたらさらに嫌われてしまうかもしれない。 頭がパニックになったその瞬間、 「大丈夫。」 ふと、優しい声が降ってきた。 泣きそうになりながら見上げると、由良さんの瞳から出るglareが、大きく弱められている。 そのまま彼は震える俺の手を、優しく包み込んで握って、笑いかけてくれた。 …あれ、なんだろう。すごく安心する…。 「できなかったからって、捨てたりしない。でも、怖くない。もしできたらきっと、とても気持ちいい。」 続いた言葉が、俺の中で歯止めをかけていた何かを、甘く優しく溶かしていって。 この人は、俺のこと全部わかってくれているんだ…。 そう考えたら、うそみたいに恐怖がなくなった。 俺は、羞恥を快楽と認めてしまうのが怖かったらしい。その二つを結びつけることで、自分がどうしようもなくはしたない人間になってしまう気がして。 …由良さんに従うことで得られるものならば、なんだって快楽なのに。 ゆっくりと足を開き、彼の目の前に秘孔を晒す。 そのまま震える指をナカに挿れて、ゆっくりと動かし始めた。 由良さんは満足そうに頷くと、またプレイ中の冷ややかな調子に戻っていく。 慣れない体勢なうえに(もともと慣れた体勢などないが)、値踏みするような由良さんの眼差しに気を取られ、うまくいかない。 …でも、気持ちいい。 脳が馬鹿になってしまったみたいだ。冷ややかな視線さえ、自分を見ていてくれているのだと思うと、快楽に変換される。 プラグは指が3本入れば入りそうな大きさだが、このままでは2本挿れることすら難しそうだ。 「それじゃダメだよ。」 突然、声とともに由良さんが俺の太ももに手を添え、かと思うと由良さんの指がナカに挿入(はい)ってきた。 まだ俺の指は入ったままなのに。 「幹斗の気持ちいいところは、ここ。」 「あっ…んっ…!!」 ここ、と言った途端由良さんがくいっと指先を曲げ、俺のナカの何処かを押した。 尋常じゃない快楽が押し寄せ、全身を巡る。まるで何かのスイッチを押されたみたいに。 そういえば、初めてのときも、由良さんがそこを押した途端に全身に快楽が巡ったのを覚えている。 由良さんの指はいつの間にか2本にふえ、そこを執拗に刺激していった。 「ぁっ、いやっ、だっ…ぁっ…. 」 怖い。気持ち良すぎて怖い。 恥ずかしくて、気持ち良くて、おかしくなってしまいそう…。 堪えきれない快楽を声に出して逃がそうとするけれど、元からその程度で逃す事のできるものではなかった。 「素直に気持ちいいと言いなさい。」 ぴしゃりと言い放たれ、それすらも気持ち良くて。 「きっ、きもちっ…、いっ…!」 「玄関先でこんな体勢で感じてしまうなんて、…いけない子。」 自分でもわかっていることだが、改めて言われるとやるせない。けれど、“でも可愛いよ”、と熱をはらんだ低く掠れた声で囁かれれば、もうどうでも良くなってしまう。 「幹斗の身体は僕のものだから、もう自分で準備をしてはいけないよ。わかったね?」 「…!!?」 突然支配的なことを言われ、身体がびくんと跳ねた。だから怒っていたのか。ああもう、…好きだ。 永遠にこの人に従っていたい…。 俺はただただ頷いて、従属欲の奴隷となる。 まるで薬漬けのラットみたい。 「ぁっ……んぐっ…、い゛ぃ゛っ!!」 由良さんの指が抜かれ、抜かれた淫楽を味わっている間もなくナカにプラグが押し込まれた。 「それを挿れて、ベッドまで落とさずお散歩できたらプレイはおしまいだよ。」 再び四つん這いの体勢に戻り、由良さんにリードを引かれ、歩みを進める。 これが終わったら褒めてもらえる。そう思うと、足取りが軽い。 途中で、振動や、由良さんが先に付いた尻尾の部分をさわった刺激で何度か落としそうになりながら、それでも落とさずにベッドまでついた。 「あぁっ… 」 由良さんがプラグを抜く。 抜けた後の余韻にしばらく浸っていたら、“よく頑張ったね、幹斗()”と言いながら優しい口づけを落とされて。 プレイ後の由良さんは底無しに甘い。それが楽しみで仕方がない反面、プレイが終わってしまうことを惜しむように、切なく胸が疼いて、自分でも驚いた。

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