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第17話②

「一週間前だったかしら。由良がここに来た時、すごく疲れた様子だったのよ。 目の下には隈ができていて、あと、少し痩せたように見えたわ。 しかもクラブの方に行くって言うから、私、反射的に聞いちゃったのよ。幹斗ちゃんはどうしたのって。 そうしたら、別れたって、泣きそうな顔して言ったのよ。」 「えっと… 」 ママの言葉に、何と返していいのかすぐには思いつかなくて、目が空を泳ぐ。 「何か心当たりはない?あなたも追い詰められているって東弥ちゃんに聞いたから、とても気になって。」 問いかけたママの表情は、とても心配そうだった。 心あたりと言われても、そんなのわからないし…。 そう思ったけれど、ママの話を聞くと彼らの言う通りどこかおかしくて、もう一度フラれた日の記憶を辿ってみると、確かに引っかかる点を見つけた。 あの日、彼の様子はおかしかった。全く俺と目を合わせようとせず、そして別れを告げた時、その表情はひどく苦しげだったのだ。 由良さんの様子がおかしかったの、いつからだっけ。 よくよく思い返してみる。 …そうだ、クリスマスの朝だ。俺は朝食を作っていて、その間に由良さんは俺の部屋の写真を眺めていて… そして俺の母親の話をした後から、俺と目を合わせなくなったのだ。 何か嫌な予感がする。完成すると絶望が出来上がる大きなジグゾーパズルが、後1ピースで完成してしまうような、そんな感覚。 考えるのをやめてしまいそうな脳に鞭を打って、思考を巡らせた。 あの朝の会話は何気ないものだと思うけれど、何か引っかかるとすれば、由良さんが俺の母親の名前を尋ねたところかな。少しおかしい。 それと… 一つ思い当たった仮説は、とても信じ難いものだった。 「ママ、由良さん、他に何か言っていませんでしたか?」 どうかその予感だけは外れますようにと願いながら、尋ねる。 「そうねえ… そういえば、幸せになる資格がないだとか、罰が下ったとかなんとか、言っていたかもしれないわね…。」 「…由良さんって、今幾つですか。」 「…私と同い年だから、…そう、今33だと思うわ。 …ねえ、幹斗ちゃん、顔色悪いわよ?大丈夫…?」 「嘘だ。。。」 そんな偶然が起こり得るのか? でも、そう思ったら全てのつじつまが合ってしまうのだ。 罰が下ったと言う発言、由良さんの年、彼の様子がおかしくなった原因。 天というものがもし本当に存在するのならば、そこはひどく残酷な場所なのかもしれない。やっと血が止まった傷口の、瘡蓋を剥がして傷口を晒し、それをえぐるようにして引きちぎることを、平気でするような。 俺は、由良さんの、息子かもしれない…。

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