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第18話①
「なあ東弥、目、怖くない?どう考えてもキャラ崩壊してない?これが噂の序盤味方系ラスボスキャラなの?ねえ??」
谷津が涙目になりながら俺と全く同じ気持ちを言葉にしてくれたのだが、東弥は何も答えずに冷たく俺を見ている。
…いや、本当に怖いのだけれど。
日記を読んで真実に絶望したあとはなかなか眠れなくて、ぐるぐると考えを巡らせながら、まだ提出まで二週間もあるレポートを徹夜で片づけた。
だからまた体調を崩してしまい、結果授業が終わるなり東弥の家に連行されたわけであるが、別にダイナミクスが暴走しているわけではない。決して。
「幹斗、昨日俺に言ってないことあるでしょう。聞かせて。」
しばらくして彼が口を開いて発された声は、それはもう液体ヘリウムより低温なのではと密かに心の中で突っ込むほどだった。
それはそうと、これは友人に話してもいい内容なのだろうか。
初めて付き合った相手が実は自分の父親で、それを知ってなお、彼のことが好きだなんて…
「話さないならcommand するからね。」
東弥はさらっと言ってのけたが、ダイナミクス的には盛大なルール違反である。とはいえ東弥に命令されたら言うことになるので、観念して話す事にした。
その代わり。
「…俺のこと、嫌わない?」
恐る恐る聞いてみた。
この場には谷津もいる。もし東弥と谷津がこの話に呆れて俺から離れていってしまったらと考えると、怖くてたまらなくて。
そうしたら、谷津に思いっきりほっぺたを引っ張られた。
「痛い… 」
「へへっ、いつもの仕返しー!!あのさ、今更嫌うとかないかんね!!お前のこと俺の彼女の次に大切にしてるから!!」
当然のように言われて、驚いた。
「じゃあ俺は恋人もいないし、幹斗が一番大切かな。」
東弥も冗談めかした口調でそう続けてくれる。
「ちょっ、それはずるいっ!!東弥と仲良くなった順番的に俺と幹斗同列じゃない!!?」
「あはは、谷津はそう言うとこ。」
「ちょっと幹斗みたいなこと東弥まで言わないでくれる!!??」
二人のやりとりが楽しくて、笑いながらありがとうと言うと、今度は”幹斗が笑った”、と盛大に驚かれた。まるでクララが立ったみたいなノリで。
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