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Ash.

 彼女を泣かせたその夜、宇宙から灰が降った。  先生は震える手で、ハンドリムを握りなおした。  その確かな炎で、この降り注ぐ灰を止めようとする──  It is because innocent she thought that she was sad that you hated snow.  Therefore, you hoped it stopped snowing.  私の傲慢な悲しみと、先生の深い悲しみが、起点を誤らせた。  だから、この灰を止めるには。このエラーを直すには。  ──You will be going to jump down from here.  ああ、エラーログが止まらない。どうあれば、この警告音は止まる? 「先生、あなたが」  降り注ぐエラーメッセージにまぎれるのが怖かった。許せなかった。いたたまれなかった。  My prof.,I'm here. もうどうしようもない、どうすることもできない。 「先生、私にとってあなたは、最後のオペレーティングシステムだ。あなたが私の世界だ。もう変えられない。他のシステムに移行なんてできるはずがない!」  だから。  私は手を伸ばした。車椅子のグリップを、爪が突き刺さるほどに強く掴む。車椅子は、わずかに斜めに傾いて停止した。  沈黙。静寂。  灰色に埋め尽くされる中で、私と先生の呼吸だけがした。  Snow will turn into heavy snow.  先生は荒い吐息を漏らして、手で顔を覆った。  私は車椅子にすがりつくように、膝を折った。 「この灰は、まだ止みません。……どんな方法でも、止ませることなんて無理だ。……そうでしょう、先生。あのラジオでも言っていた。しばらく灰は降る──」  先生は何も言わなかった。私は喘ぐように、ただ続ける。 「でもいずれ灰は止む。きっと止むんです。……止んでほしい……、そうでなければ……」  その先を遮るように、先生がかすれた声で言う。 「……起点を間違ったのは私だ。私などを世界にしたから、君が方向を見失った。だから、灰が降った」  君はどこも悪くない、と暗い言葉が続いた。  私はうつむいて下唇を噛み、ハンドリムを握る先生の左手を握り締めた。息苦しさと浅ましい傲慢さを、噛み締めた唇の合間から吐き出して、先生の年取った手を強く掴み取る。 「それでも、あなたは、私の、世界だ」  このコードは、端的に言えばI love you。そして、即物的なI need you。  この合理化を果たした世界の、唯一の欠陥。  私は、何よりも、あなたを選んでしまう。  先生は、私の愚かな手を強く握り返した。憤りさえ感じるような、激しい深愛で。

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