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第26話ちょっとした悩みと誕生日前夜

ケリーがパーシーと結婚してから1ヶ月程経った。季節はすっかり秋である。気がつけば5日後はケリーの誕生日である。長生き手続きをやめて2度目の誕生日だ。ケリーは肉体年齢が27歳になる。 ケリーはぷかー、と煙草の煙を吐き出した。春には様々な花で賑やかだった中庭も、秋になり、すっかり落ち着いている。中庭の隅っこに座って、ぼーっと煙草を吸う。秋の落ち着いた日射しと少し涼しい風が気持ちいい。 ケリーは愛煙家である。軍人時代は1箱20本入りの煙草を、多い時では1日に3箱くらい軽く吸っていた。今はそんなに吸わない。というか、殆んど吸わなくなった。パーシーや子供達がいる所では吸わないし、部屋でも吸わない。 今は、朝起きて日課前に中庭で1本吸い、カーラが学校に行っている間に中庭で昼食後に1本吸い、あとは気が向いた時に寝る前に1本吸うだけである。たまに近所の宿屋で酒を飲む時は、他にも喫煙者がいるし酒を飲むと煙草が欲しくなるのでそれなりに吸うが、それだけである。煙草は好きだが、なんだかもうやめてもいいかなぁ、と最近思うようになってきた。 ゆっくり煙草を1本吸い終わると、煙草を蓋ができるタイプの缶の灰皿に押しつけて火を消して、缶の中に吸い殻を放り込んで蓋をした。 ぼーっと風にはためく洗濯物を眺める。今日はパーシーは仕事だし、カーラは学校に行っている。カーラはあと2時間程は帰ってこない。アニーの世話は一応終わっている。普段ならパーシーの本を読んでいるが、なんとなく気分じゃない。 ケリーはここ1週間程悩んでいた。悩みの種は他でもない。パーシーのことである。パーシーと結婚してから1ヶ月ちょい経っている。買い物に行く時に手を繋いだり、たまにカーラも一緒に風呂に入ったり、一緒に寝たりもしている。夜に寝る前に軽い触れるだけのキスもしている。でもそれだけだ。それだけなのである。ぶっちゃけ結婚前とほぼ変わらないのだ。おやすみのキスをするようになったくらいである。 ケリーはパーシーとセックスがしたいかと聞かれたら、正直まだ答えに詰まる自信はある。しかしである。パーシーはまだ30歳でケリーも肉体年齢はギリギリ26歳と、お互い若い男なのである。それが結婚してもお手手繋いで、おやすみのキスだけという健全っぷりは流石にどうかと思うのだ。 パーシーを性的な目で見ていなかったが、多分ケリーはパーシーとセックスができると思う。しかし、ケリーがパーシーを抱くのか、パーシーがケリーを抱くのかが分からない。多分ケリーがパーシーを抱くのではないだろうか。ケリーのような筋骨粒々でゴツいハゲを抱こうとする猛者はそうそういない気がする。実際、ケリーは男を抱いたことはあるが、抱かれたことはないし、ケリーを抱こうと挑戦する猛者と付き合ったこともない。 実は男同士のセックスの必需品であるローションを未入手なのである。1人で買いに行くのは確実に迷子になるし、カーラと一緒の時に買うのは無理だし、パーシーと2人で出かける時に買うのも露骨すぎて気まずくて無理なのだ。詰んでいる。 ケリーは副団長を辞める数年前から、すっかり下半身的な意味で大人しくなっている。一時期はストレス発散で花街に頻繁に通っていたが、辞める数年前からはそんな気力も無くなっていた。カサンドラに来て、パーシーとカーラと暮らし始めてからは自慰すらもしていない。毎日が充実しているし、日課で身体を動かしているので、それでそれなりに発散されて欲求不満にはならない。ストレスも感じていない。朝勃ちはするが、起きればすぐにおさまるし、ケリーの隣の部屋はカーラの部屋なので、いくらケリーが防音結界を張れるとはいえ、なんとなく気まずいし、やらなかった。 パーシーとセックスがしたいかどうかは自分でもいまいち分かっていない。でも折角夫婦になったのだ。セックス本番はしなくても、もうちょっと触れ合い的な何かがあってもいい気がする。そう思うと、なんだかパーシーに触れたくて落ち着かない気分になる。 チラッとそんなことを考えてからのここ1週間、どうやってパーシーと触れ合うか、その方法を悩んでいた。カーラも10歳なので、多分小学校で性教育を受けているだろう。カーラの手前、堂々とパーシーやケリーの部屋で2人で寝るのは微妙に気まずい。いや、夫婦なのだから一緒に寝るのは当たり前なのだが、パーシーも何も言わないし、寝室は別のままである。各々自室で寝ている。結婚したばかりの頃は、正式にパーシーとカーラと家族になれたことに浮かれていて全然気にしていなかったが、今は正直この現状をどうかと思っている。つーか、プロポーズしてきたし、ケリーが好きって言ってきたんだから、パーシーから誘ってくれたら話は早いのだ。パーシーが誘ってくれたら素直にケリーも頷く気だし、なんならもうセックスをしたっていい。しかしパーシーからの動きはない。おやすみのキスをして、照れたようにはにかんで笑うだけだ。子供か。今時の中学生の方が余程進んでいる気がする。 ケリーは悶々としていた。普段は昼間に1本しか吸わない煙草を取り出して、口に咥えて火を着けた。煙草の煙を深く吸い込み、ふぅーっと細く長く吐き出す。気のきいた誘い文句なんて、ケリーには言えそうにないし、そもそも思いつかない。ド直球に言うのもどうかと思う。どうしたもんかなぁ、とぼんやり思いながら、ケリーは煙と共に大きな溜め息を吐き出した。 ーーーーーー ケリーの誕生日が近づくにつれ、日に日にカーラがそわそわし始めた。学校から帰ると、『ケビンと遊んでくる』と言って出かけていく。多分パーシーの誕生日の時同様、ケリーに何か用意をしてくれているのだろう。分かりやすいカーラが微笑ましいし、なんだか嬉しい。 今日はケリーの誕生日前日である。明日はちょうどカーラの学校は休みの日で、パーシーも休みをとっている。3人で朝から出かける予定である。ケリーが好きな『土の神子マーサ資料館』に行き、外で旨いものを食べる予定である。 いつも通り3人で夕食を食べ終え、風呂に入ると、そわそわしていたカーラは早々と自室に引っ込んだ。ケリーは軽めの酒を飲みながら、温かいお茶を飲むパーシーとのんびり1階でお喋りしていた。毎日パーシーと夜に話すのが、もう完全に日常になっている。毎日話をしても、話題が尽きることはない。パーシーの最近の研究の話を聞いていると、そろそろ普段寝る時間になった。2人で使ったグラスなどを洗って片付けてから、2階に上がる。いつも通り、部屋の前の廊下でおやすみのキスをして、自室に戻ろうとしたケリーの手をパーシーが掴んだ。 「ケリー」 「ん?」 「あー……その、僕の部屋で寝ませんか?」 「へ?」 ケリーは突然のパーシーの言葉に驚いて、目をパチパチさせた。これはあれだろうか。夜のお誘いだろうか。パーシーは少し赤い顔をしている。結婚してから1ヶ月以上何もなかったが、ついに夜を一緒に過ごす時がきたようである。ケリーは何と答えたらいいか分からなかったので、無言でコクコクと頭を上下に振った。ケリーが頷くと、パーシーはホッとしたような表情になった。 パーシーに手を引かれて、ケリーはパーシーの部屋に入った。本を借りるために何度も入ったことがあるパーシーの部屋は、まるで図書館のような匂いがする。書き物机とベッドと衣装箪笥以外は本棚しかない。書き物机の上には、多分今書いているのであろう論文と思わしき原稿用紙が積まれている。壁一面にある本棚には本が隙間無く並んでいる。本棚に入りきらない本は床に布を敷いて、その上にキレイに積まれている。書き物机には、カーラからの誕生日プレゼントであるマグカップが飾られている。ケリーも一緒に作った今年の誕生日プレゼントの栞も2枚、写真立てに入った状態で飾られていた。パーシーは栞を贈った最初のうちは使っていたが、『やっぱり失くしたら嫌だし、キレイだから使うのが勿体無い』と言って、わざわざ写真立てを買ってきて栞を入れて、自分の机に飾った。 ケリーはパーシーと共に、パーシーのベッドに並んで腰かけた。セックスなんてもう何年もしていない。おまけに相手はパーシーだ。どうしてもちょっと緊張してしまう。男同士のセックスの必需品であるローションはパーシーが多分用意してくれているのだろう。 ケリーはパーシーと繋いでいない方の手で、指をパチンと鳴らして防音結界を張った。ケリーはそこそこ魔力量が多い。本職の魔術師程ではないが、多少難しい魔術も使えるし、防音結界くらいなら息を吸うように簡単に張れる。突然指を鳴らしたケリーをパーシーが不思議そうに見つめた。 「防音結界張った」 「あ、はい」 パーシーの目元がじんわり赤くなった。意味が分かっているらしい。パーシーの顔がケリーの顔に近づいて、唇にそっと触れるだけのキスをした。繋いだ指を絡めながら、何度も優しいキスをしてくる。ケリーも応えて、軽くパーシーの唇を吸った。互いに顔の角度を変えながら、何度も唇を吸い合う。久々過ぎるキスが気持ちがいい。パーシーの柔らかい少しかさついた唇の感触にじんわり興奮してくる。パーシーに舌で軽く唇を舐められて、ケリーも舌を出した。舌を絡めて、互いの口内を舐めあう。上顎をねっとりと舐められると気持ちよくてゾクゾクする。ケリーもパーシーの上顎を舐め、歯列を舌でなぞり、舌同士をねっとり絡めあわせた。ケリーは気づけばパーシーとのキスに夢中になっていた。片手はパーシーと指を絡めあわせたまま、空いた手をパーシーの背中に回して細い身体を抱き締める。パーシーもケリーの身体に長い腕を回して抱き締めてきた。パーシーと夢中でキスをして、抱き締めあい、そのまま2人でベッドに倒れこんだ。パーシーがキスをしながらケリーに覆い被さってくる。身体が密着して、ケリーの股間の辺りに固いものが触れている。パーシーがもう勃起しているのだろう。ケリーもじわじわ股間に血液が溜まっていく感覚がしている。 完全にパーシーに押し倒されている状況に、ケリーはハッとなった。まさかケリーが抱かれる方ではあるまいな。 ケリーは荒くなった息を吐きながら、唇を離した。 「なぁ」 「うん」 「まさかとは思うが」 「ん?」 「俺が抱かれる側じゃないよな?」 「嫌?」 「……マジか」 猛者がいた。超至近距離で見えるパーシーの目はマジである。熱に浮かされたような目でケリーを見つめているし、なんならグイグイ固くなっている股間を押しつけてきている。マジか。別に嫌ではないが抱かれた経験などないし、正直戸惑う。 「だめ?」 「……ダメじゃねぇけど」 「けど?」 「……こっち側はやったことねぇ」 ケリーがボソッと小さな声で言うと、パーシーが嬉しそうに微笑んでケリーの頬にキスをした。 「がんばります」 「……マジかー」 ケリーは、なんだかより上機嫌になったパーシーからのキスを素直に受け入れた。 現在、ケリーは全裸で四つん這いになり、パーシーの細くて長い指をずっぽり3本アナルに咥えこんでいる。キスをしながら服を脱がされ、少し荒っぽく自分の服も脱ぎ捨てたパーシーに文字通り全身舐められた。浄化魔術をかけられたアナルもめちゃくちゃ舐められた。アナルを舐められるなんて、人生初である。気持ちよかったのがなんだか微妙に悔しい。ケリーが射精するまでぺニスもひたすら舐められたし、お徳用のデカいローションのボトルをどこからか取り出したパーシーに、指でアナルを解されている。生まれて初めて前立腺を刺激され、強すぎる刺激にケリーは腰をくねらせて喘いだ。ケリーのアナルに入れている指を動かしながら、パーシーがねっとりケリーの尻を舐めた。既に足の指までねっとり舐め回されている。乳首も散々弄られたし、臍にも舌を突っ込まれ、手の指も脇も腹も背中も、本当に全身舐め回された。どんだけ舐めるのが好きなんだよ。ちゅっとケリーの尻にキスをして、パーシーがケリーのアナルから指を引き抜いた。指を引き抜かれる感触にすら、ゾクゾクして小さく喘いでしまう。アナルがこんなに気持ちがいいとは思ってなかった。想像をはるかに越える快感が少し怖いくらいである。ケリーが荒い息を吐きながら後ろを振り返ると、パーシーが勃起して元気よく反り返っている自分のぺニスにローションを塗っていた。いよいよか。ケリーは少しの怖さと期待でゴクッと唾を飲み込んだ。 「いい?」 「……おう」 パーシーの手がケリーの腰を掴んで、解されまくったケリーのアナルに熱くて固いパーシーのぺニスの先っぽが触れた。そのまま、じわじわとゆっくり狭いアナルの中を押し拡げるようにしてパーシーのぺニスが入ってくる。しつこいくらいに解されているので、痛みはない。ただ圧迫感や異物感はある。ケリーは少し苦しいそれらを逃すように、はぁっと大きく息を吐いた。根本まで入ったのか、パーシーの動きが止まった。腰をやんわり優しく撫でられる。パーシーはそのまま暫く動かず、ケリーの腰や尻を撫でたり、今回初めて発覚したケリーの性感帯である肩甲骨を優しく舐め回した。肩甲骨を舐められると、気持ちよくて、ついアナルに自然と力が入ってしまう。きゅっとアナルを絞めると、パーシーの熱くて固いぺニスを意識してしまう。パーシーのぺニスはケリーのアナルに入っているだけで動いていないのに、なんだか早くもじわじわ気持ちよくなってきた。パーシーの熱を感じて興奮してしまう。自分はこっちの才能があったのかと、頭の片隅でちょっと感心してしまった。なんだかもう我慢できない。動いてほしい。 「はぁ……パーシー……」 「痛い?」 「いや……動いてくれ……」 「うん」 パーシーがゆっくり動き出した。少し焦れったい程優しく動いている。ゆっくりぺニスを引き抜き、またゆっくりと押し込んでくる。ぺニスの太いところで前立腺を擦られる度にケリーは腰を震わせて小さく喘いだ。そのうち徐々にパーシーの動きが速く激しくなっていく。2人分の荒い呼吸音とケリーの押し殺した小さな喘ぎ声、ベッドの軋む音が部屋に響く。 「はっ、はっ、あっ、あ、あぁっ……」 「はっ、ケリー、気持ちいい?」 「あ、あ、あっ、いいっ……んあっ、あ……」 ちょっと信じられないくらい気持ちがいい。今まで経験してきたセックスはなんだったのかと言いたくなる程気持ちがいい。イキたくて堪らない。ケリーは自分で勃起して先走りをダラダラ垂らしている塗れたぺニスを掴んで、焦らすことなく激しく擦り始めた。きゅっとキツくアナルでパーシーのぺニスを締めつける。パーシーの動きが更に激しくなった。奥へ奥へと突き上げられて、ケリーは口を開けっ放しにして涎を垂らしながら喘いだ。パンパンとケリーの尻とパーシーの下腹部がぶつかる音がする程激しくパーシーにアナルを攻め立てられる。もう限界である。 「あっ!あっ!あっ!あっ!いくっ!いくっ!あぁぁぁっ!!」 「はっ、はっ、あぁっ!」 ケリーはキツくパーシーのぺニスをアナルで締めつけながら、勢いよく射精した。気持ちよすぎて頭の中が真っ白になる。パーシーも何度か強く腰を打ちつけて、ケリーの中で射精した。自分の中でパーシーのぺニスがビクビクして、精液を吐き出しているのがなんとなく分かる。本当に馬鹿になるんじゃないかと思うくらい気持ちよかった。パーシーのぺニスがゆっくりと引き抜かれた。途端に自分のアナルからパーシーの精液が溢れて垂れる感触がする。ケリーはパーシーの促されるままに荒い息を吐きながら、四つん這いの体勢から、ベッドの上に仰向けに寝転がった。すかさずパーシーがケリーの唇にキスをしてくる。ケリーは素直にそれを受け入れ、パーシーの首に両腕を絡めた。互いに舌を出して絡めあう。パーシーがケリーの太腿に触れ、ケリーはパーシーに促されるがままに膝を立てて脚を大きく開いた。早くもまた勃起したパーシーの熱くて固いぺニスの先っぽが再びケリーのアナルに触れる。ケリーはパーシーに求められるがままに、何度もパーシーのぺニスを受け入れた。 ケリーは未だに整わない荒い呼吸をしながら、ぐったり寝転がっていた。パーシーはピッタリ汗だくのケリーに横から抱きついて、何度もケリーの頬にキスをしている。抱かれるのがこんなに体力やらなんやかんや使うとは思っていなかった。体力にはかなり自信がある方だが、なんかもうぐったりである。パーシーがケリーの逞しい胸筋を撫で回しながら、顔を上げて枕元に置いてある目覚まし時計を見た。 「ケリー」 「あー?」 「誕生日おめでとう」 パーシーが穏やかに微笑んで、またケリーの唇のキスをした。どうやら日付が変わっているらしい。 「……ありがと」 「愛してる。これからもよろしくね」 「おう」 鼻を擦り合わせてくるパーシーの唇に、ケリーからキスをした。なんだか嬉しくて腹の底がむずむずする。ケリーは照れくさくて、でも嬉しくて、小さく笑ってパーシーの細い身体を抱き締めた。

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