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第30話『家族写真』

ケリーは自室でベッドに腰かけて、写真を1枚丁寧にアルバムに入れた。空いているスペースに日付を書き込む。 今年も無事に結婚記念日を迎えることができた。ちょうど今年でパーシーと結婚して15年である。結婚記念日の度に家族写真を撮っている。結婚記念日の写真は、昔パーシーから誕生日プレゼントに貰ったアルバムに入れている。他にもカーラの結婚式や孫達が産まれた時の写真も入れている。分厚いアルバムの半分が既に埋まっている。 すぐ隣に座ったパーシーがケリーが持つアルバムを覗き込んだ。お互い40代になっている。パーシーは相変わらずひょろ長いし、ケリーは筋骨粒々でつるりとした頭のままだ。ケリーの部屋には大きめの本棚があり、そこにはまだ半分くらいの本しか並んでいない。ケリーの誕生日に毎年パーシーから贈られるマーサの日記の写本はあと少しで半分になる。長かったような、あっという間だったような15年だった。 ケリーは目を細めて、今年の家族写真を指で優しくなぞった。孫達もどんどん大きくなっている。アイールは小学校に入学したし、コリンは毎日元気に外を走り回っている。コリンが最近剣を習いたいと言い出したので、7歳になったらケリーがコリンに剣を教えることになった。 カーラは現在3人目を妊娠中である。年明けくらいには、また孫が増える。カーラとケビンの仲は良好で、カーラは『ケビンだけいればいい』と言って、他に夫を持つ気がない。少し前にマイキーに告白されたが断っていた。ケリーはフラれたマイキーのやけ酒に付き合ってやった。他にも小学校の頃の男友達にも告白されていたが、そっちも即答で断った。本当にケビンだけでいいらしい。 来年の家族写真には、またもう1人家族が増えている。ケリーはそれが楽しみで仕方がない。ぴったり寄り添っているパーシーの頬に、なんとなくケリーはキスをした。パーシーが嬉しそうに笑って、ケリーの唇にキスをする。 パーシーが穏やかに微笑んで、ケリーからアルバムを受け取り、立ち上がってアルバムを本棚に並べた。 戻ってきたパーシーにベッドの上に押し倒される。相変わらずパーシーはケリーを抱く。真性の猛者である。戯れるようなキスをしてくるパーシーにケリーも笑いながら応え、パーシーの首に両腕を絡めた。 一戦が終わり、荒い息を吐きながら、ベッドに寝転がって全裸のままくっついている。並んで寝転がっているパーシーが手を握ってきたので、指を絡めた。 「ケリー」 「んー?」 「今年の誕生日さ、ちょっと皆で旅行に行かない?」 「お。いいな。何処に行くんだ?」 「フリージアはどうかなって。まる1日くらいで行けるし、移動含めて1週間くらいで」 「ははっ。いいないいな。けどパーシー。休みは取れるのか?」 「うん。まぁ、なんとかするよ」 「楽しみだ。フレディに貰った珈琲豆めちゃくちゃ旨かったもんな。また飲みてぇなって思ってたんだ」 「旅行なんてカーラ達したことがないしね。……旅行でもいっぱい写真撮ろう」 「おう!明日パーシー休みだろ?撮影機買いに付き合ってくれ。前にパーシーから貰ったやつがいよいよ寿命でな」 「うん。あ、たまには2人きりで出かけようか」 「おう。なら資料館にも行きたい。最近2人だけじゃ行けてないしよぉ」 「ふふっ。いいね。展示が少し変わったよ。最新の研究を盛り込んだんだ」 「お。そいつは見たいな。もしかしてパーシーの研究成果か?」 「うん」 「すげぇな。是非とも見に行かねぇと」 「……ケリー」 「ん?」 「家族が増えたね」 「年明けにはもう1人増えるな」 「うん。幸せだよ、僕」 「俺もだよ」 「僕が定年退職したらさ、この辺りのマーサ縁の地を旅してみない?2人でさ」 「そいつは素敵だ。いつでも行けるように身体を鍛えとくわ。旅は体力勝負だからよ」 「はははっ。その歳まで鍛えるの?」 「おう」 「ふふっ。ケリーは変わらないね」 「いや結構老けたぜ」 「そう?いつだって魅力的だ。きっと旅に出る頃も変わらないよ」 「物好きめ」 「そうかな?すごく趣味がいいと思うけど」 「あ、こら。そこ弄んな」 「明日休みだし」 「出かけるんだろ?」 「まぁまぁまぁまぁ」 「……まぁ、いいけどよ。元気だな」 「生涯現役のつもりだから、僕。ケリーとならいくつになってもできるよ」 「そうかい。やっぱり物好きだ」 ケリーは苦笑して、悪戯に乳首を弄ってくるパーシーの唇にキスをした。舌を絡めながら乳首を優しく弄られると、落ち着いていた身体がまたじんわり熱を持つ。ケリーは素直にパーシーから与えられる快感を受け入れ、再びパーシーの熱に溺れた。 ーーーーーー パーシーから毎年誕生日に贈られるマーサの日記の写本が全て揃った。 ケリーもパーシーも歳をとったが、まだまだ元気である。孫のアイールが成人してすぐに結婚したので、曾孫までいる。 家族写真も本当に増えた。写真に写る家族も。 ケリーはたまにパーシーと一緒にちょっとした旅に出ている。マーサ縁の地を訪ねて回っている。カサンドラを中心に動くし、そこまで遠くには行かないが、それでも中々に充実した日々をパーシーと共に送っている。 旅先の写真専門のアルバムも随分と増えた。パーシーは定年退職してから、それまで毎朝キレイに剃っていた髭を伸ばし始め、今は豊かな口髭を生やしている。これがかなり似合っている。パーシーとキスをする度に口髭があたってくすぐったいが、お互い様である。 パーシーはまだまだそっちの方も現役で、特に旅先だと盛り上がってしまう。こんな爺になっても抱かれることになるとは流石に思っていなかった。若い頃のように何回もはできないが、その分じっくり時間をかけて楽しんでいる。 今はパーシーと2人でベッドに腰かけて、今年の結婚記念日の写真をアルバムに入れている。1頁目の初めて本当に家族になった時からの写真を2人で見ながら、思い出話に花を咲かせる。 「なぁ、パーシー」 「なに?ケリー」 「幸せだな。こんなに沢山家族がいる」 「そうだね。僕も幸せだ。ケリーはいくつになっても魅力的だし」 「物好きめ」 「ふふふっ」 パーシーがアルバムを眺めながら、いやらしくケリーの腰を撫で回した。 「ね、しようか」 「……お前さん、本当に元気だな」 「ケリーが魅力的なのが悪いと思うよ」 「言ってろ」 クックッと笑いながら、ケリーは手を伸ばしてベッドのヘッドボードに、もうだいぶ古くなったアルバムをそっと置いた。 キスをしてくるパーシーに応えて、ケリーも自分から舌を出して、パーシーの舌に絡める。 この先もずっと死ぬまでパーシーと一緒にいるのだろう。カーラやケビン、孫達も一緒に。それがもう当たり前になっている。 ケリーは悪戯するように優しく身体に触れてくるパーシーの手を素直に受け入れながら、穏やかに微笑んだ。 〈完〉

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