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プロローグ
僕の兄は、綺麗な人だ。
頭も良くて、人望もあって、なにより優しい。
セレック街の貴公子と呼ばれる兄は、僕の自慢だった。
「あ、あああっ!! や、やだぁぁ! 兄さん! にいざんッ!」
幼い頃から、兄はいつも僕を可愛がってくれた。
次期領主として勉強しなきゃいけない時間に僕がだだをこねると、必ず手を止めて遊んでくれた。僕が熱を出すと、付きっ切りで看病してくれた。
悪いことをしたときは、目をあわせて手を握って、優しく言い聞かせてくれる。そんな人だった。
「ああ……。リタ……。もっとお鳴きよ。可愛い声を、僕に聞かせて?」
兄と喧嘩なんて、一度もしたことがない。叩かれたことだって、もちろんない。痛いことなんて、されたことはなかったのに。
どうして僕のお尻は、こんなにも痛むのだろう。
どうして、兄は僕を犯しているのだろう。
「ほら、お鳴き」
ばちん、と兄の手が僕の臀部を打った。
じんじんとするそこは、きっと真っ赤になってしまっている。だって、兄はさっきからずっと同じところばっかり叩くのだ。
「いたいよぉ! やめ、やめてっ! にいさん……! いたいぃぃ!」
痛い。とても、痛い。
叩かれたお尻だけじゃない。それよりも、もっと痛むところ。
兄の男を咥え込まされた僕のあそこが、痛い。兄が動く度に、刃物でちょっとずつ切られるような鋭い痛みがはしって、僕は辛くて仕方がなかった。
「リタの悲鳴は、可愛いね。わかるかい? リタを泣かせているのは、僕だ」
後ろから強く腰を打ちつけられて、僕は痛さのあまりに仰け反って悲鳴をあげる。それを上から覗き込む兄の顔は、弟の僕から見ても惚れ惚れするほどにうつくしい。
「リタ……」
優しい声。慈しむような声。僕の大好きな、兄さんの声。
いつもと変わらない声音で、兄は僕の髪をひっぱる。そうして僕をもっと仰け反らせて、微笑むのだ。
「いたいっ……! にいさ……、いたい……っ」
「ああ、リタ……。可愛い……」
兄の薄い唇が僕の唇とあわさる。
鋭い痛みで揺さぶられながら、僕は口の中まで兄に犯されていた。僕と兄は逆さまで、僕の目の前には兄の造形美然とした喉仏がある。舌を吸われて、唾液を奪われて、兄の喉がこくりと動いていた。
「君は、僕のもの。いいかい? リタには僕しかいないんだ。心配はいらないよ。目一杯、愛してあげる……」
にいさん、どうして……?
僕の問いは兄に吸われてしまって、音にならなかった。
兄さん。エミリア兄さん。
誰より優しかった兄さん。
兄さんはどうして僕にこんな酷い仕打ちをするのですか。
「あうぅッ、うぅぅっ! いたい、いたいッ! にいざぁぁんッ!!」
僕の目から、涙がすべり落ちる。赤々とした舌でそれを舐める兄は、やっぱりうつくしかった。
「ああ、リタ。嬉しいんだね? 可愛い、可愛い、僕のリタ……。僕だけのリタ……」
恍惚とした息を吐く兄は、ただただ綺麗で。瞳に僕の知らない危険な光を宿していても、兄は兄だった。
何回、夢だと思おうとしたか。何回、痛みで現実だと知らしめさせられたか。
兄は僕を貫き、ひどい苦痛を与えながら言葉を紡ぐ。
「愛しているよ、リタ」
聞くものの心をとろとろに蕩かしてしまいそうな、甘い声で。
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