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4.ポップサーカス 【6】

「京灯、何処行くの」 「俺が知るかよッ」 チクショー!批土岐に先越された!なんて思いながら、人の群れから離れて目指す場所もなくとりあえず歩き続ける。 その間も、夜空に打ち上がる花火。 連なる出店から距離を置けば、辺りは一気に漆黒の世界。 「お前ずりぃッ」 「京灯?」 自分でもよく分からなかったけれど、気付いたら出ていた言葉に批土岐は首を傾げる。 「クソッ…、簡単にやりやがって…」 紅い頬、でもこの暗さじゃ関係ない。 俺なんか、どうやったら批土岐ちゃんを上手いこと!なんて考えて考えて必死だっていうのに。 お前はいつでも簡単にアッサリと、俺を翻弄すんだよ。 「ん?」 やがて止まった足、追いついた批土岐が俺の目の前に立つ。普段は車が行き来する橋の上も、今は封鎖されてあちこちで花火を楽しむ奴らの姿が視界に入る。 遠く向こうの河原から、間髪入れずに飛び立っていく花火たち。 「……俺が先に仕掛けたかったのにッ」 そっぽを向いて、拗ねたように唇を尖らせながらボソボソと呟く。 こんなはずじゃなかったっつうに!! マジで夢見んのはそろそろやめたほうがいいっつうわけ?! 「なに?誘おうとしてくれたんだ?」 「ッ…ちげえよっ、俺はッ……」 すぐ側にまで来た批土岐から、甘い香りが鼻孔を擽って。 遠慮がちに目を合わせてみれば、優しく微笑んでいる姿が印象的で。 あぁ、やっぱ俺コイツのことすげえ好き。

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