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おまけ
絶対、宮原くんとデートしたいから、予定空けておいてねと言われていた二月十四日。勢いに押されてつい、頷いたけど。
「はぁ…」
俺の小さなため息に、陸が気がついた。
「どうしたの、建志。ため息ついて」
「いやそんな大した話じゃない」
「えー、僕じゃ役に立たないっていうの?」
プーっと頬を膨らます陸。そんな可愛い顔は、貴暁だけに見せてやれっての。
絶対笑わないと約束するか?と陸に聞くとゆびきりげんまんをしてきたので、俺は陸に相談することにした。
「男同士のバレンタインデーて、どっちからチョコあげりゃいいんだ?」
俺のその言葉を聞いて、陸は大爆笑した。
「ごめんごめん、つい」
陸が手を合わせて謝ってきた。あれだけ笑わないって言ったのに!
「男同士とか関係なく、あげちゃえばいいじゃん。僕は貴暁にあげるよ」
「…何か、こっちの方が惚れてるみたいでヤダ」
「何だよソレ」
岸とはキスした仲だし、今更そんなこと言っても仕方ないんだけど、俺が惚れてるって思われるのは恥ずかしくて。
「やっぱり渡すのやめよう」
「あーあ、岸、可哀想…」
二月十三日。
俺の部屋の机にはちょこんと、チョコがある。
渡すのをやめようと決意しながらつい、買ってしまった…。もう自分が分かんねぇ!
どうしよっかなと眺めていると、メールが届いた音がしたので、スマホを見る。
『ごめん!風邪ひいて熱が出たから、明日のデート延期にしてー!』
岸からのメール。この言葉の後には、大量の涙目の絵文字。
あらま、こりゃしょうがないな。
『了解!あったかくして、早く治せよ』
送信した後、ふと思った。もう少し、寂しがったほうがよかったか?
結局、それから岸に会えたのは一週間後。
放課後の教室で帰り支度していると、クラスの違う岸は当然のように教室に入ってきて俺を待っている。
「何でよりによってバレンタインデーに風邪ひいたんだろ、俺」
椅子に座ってブツブツ言っている。口を尖らせているのが面白くて思わず笑ってしまう。
「まあ、そんなに拗ねるなよ。ほらこれやるから」
俺はカバンの中から、渡せていなかったチョコをほい、と机に投げる。慌てて手を出してキャッチした岸は目をパチパチしている。
「…え、これもしかしてバレンタインデーのチョコ?」
「いらないんなら返せよ」
ただでさえ恥ずかしいんだから、聞き返すなってーの。岸は勢いよく立ち上がり、俺を抱き締めた。
「あ、アホっ!まだ誰か来るかもしれねえだろっ」
「だって!宮原くんからのチョコだよ?嬉しくて!」
岸はそれはもう嬉しそうに笑い、俺が真っ赤になっていると、頰にキスしてきて手をぎゅっと握った。
「早く帰ろう!もっと甘えたい!」
あああ、そんな顔見たら、俺だって嬉しくなっちまうだろ!
【了】
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