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第2話 幸せな日々2
「……ん……」
体を包み込む暖かな感覚に黒崎の意識が現実世界へと戻って来る。
黒崎は沢井に抱きかかえられるようにしてバスタブにつかっていた。
「……和浩さん……」
愛する人を呼ぶ声は酷く掠れている。
それがセックスしたときに声を出し過ぎた所為だということを黒崎はすぐに思い出し、赤面する。
行為に夢中になってあられもない声を出した。
その声を、乱れる姿を、沢井に見られて恥ずかしくてたまらない。
もう数えきれないくらい体を重ねていても、奥手な黒崎は慣れることがない。
「大丈夫か? 雅文?」
沢井が端整な顔立ちにほんの少しの心配を乗せ、聞いて来る。
その沢井の声もなんとも色っぽく掠れている。
「ん……大丈夫。……和浩さんの方こそ大丈夫? 俺は明日夕方からのシフトだけど、和浩さんは朝一でしょう?」
沢井と黒崎は源氏ケ丘大学付属病院の外科医師をしている。
救急指定病院であるので、忙しさは半端ない。
二人は男同士ながら生涯一緒にいようと愛を誓い合い、結婚もしている。
勿論、現在の日本では同性婚は認められていないので、二人の間と、沢井の親友で同じ外科医の川上(かわかみ)と直属の上司の松田(まつだ)部長しかその事実は知らないが。
仕事がないときには二人はお揃いのマリッジリングをし、そんじょそこらの男女の新婚カップルよりも甘く、お互いを尊重しあった関係を築いている。
今でこそラブラブで幸せいっぱいの暮らしを送っている沢井と黒崎だが、そうなれるまでには色々とあった。
沢井はバイセクシャルでバツイチである。
元妻はおんなじ病院で働く外科医で二人の間には子供までいる。
そのことが原因で沢井と黒崎の心が長い間すれ違ってしまっていた時期もあった。
様々な苦しみや悲しみや傷つきを乗り越え、沢井と黒崎はお互いが唯一無二の存在と確信し合っている。
「大丈夫。まだまだ体力はあるから。三日ぶりなんだ。まだまだ離さないから」
「あっ……ちょっと和浩さん、どこ、触ってるの? ダメだよ」
敏感な部分に触れて来る手を黒崎がやんわりととめると、沢井は上目遣いになって強請って来る。
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