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プロローグ③

叶芽はΩである。 だからと言って別に悲観してはいない。 ただΩだからか、高校での友達は幼馴染みの佑真しかいなかった。 しかしながら佑真だけいれば別に友達が欲しいとは今は思わない。 校舎を出て駐車場へ着くとそこには金持ち校らしく高級車がずらりと並んでいた。 その中の一台の車の横に立っているスーツを着た男性が2人を見つけるや否や、スッと後部座席のドアを開けた。 「お帰りなさいませ、佑真さん、叶芽さん」 両親もαの佑真の家は資産家であり、学校に通うにあたっては運転手を雇い送り迎えをして貰っている。 そして家が近い叶芽もついでに一緒に乗せて貰っている。 「着いたぞ」 「ん……」 疲れて佑真の肩にもたれ掛かって寝ていた叶芽は家に着いたと起こされ、眠い目を擦りながら車を出た。 「じゃ、また日曜な」 「ん、またね」 佑真を乗せた車はゆっくりと走りだし、すぐ目と鼻の先の大きな屋敷に入っていったのを見送った叶芽も自分の家に入ろうと見上げる先は、とんでもなく大きな家だった。 叶芽はそこにただいまーと元気よく入っていく。 「お帰りなさい」 「ただいま、あやたん」 出迎えたこの若い男性は、この家の家政夫の緑川斐紹(みどりかわあやつぐ)だ。 広い玄関から広い廊下を突き抜け、ドアを開けた先はまた広いリビングが待っていた。 「お帰り」 「母ちゃんただいま」 二階へ続く階段から悠々と降りてきた叶芽の母親だが、れっきとした"男"だ。 柊千歳(ちとせ)と言う叶芽とそっくりな母親のうなじには、くっきりと歯形が見える。 彼もまた叶芽と同じΩだ。 「そうだ、日曜佑真と出掛ける約束したから」 「そうか」 叶芽が幼い頃から仲良くしてくれる佑真は千歳にとっては心強い息子の友人である。 出来ることなら叶芽の番相手は彼がいいなんて勝手に妄想までしていた。

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