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二人の関係性⑨
大企業の子息な叶芽だが、普段接していてもお金持ちのお坊っちゃまと言う雰囲気を感じない。
普通に一緒にファミレスやファストフード店に行ってくれるので、もしかしたら自分に無理矢理合わせてくれたのではと渚は不安になる。
それに貧乏臭い狭い我が家にも来てくれた。
いつもより静かだったのできっと早く帰りたかったろうなと申し訳無い。
「まぁ別にそれはどうでもいいけどナギ体調大丈夫?
タクシー呼ぶ?」
こんなふらふらで家まで帰られるのだろうかと叶芽はタクシーで帰った方がいいのではと思う。
「いや、タクシーは呼ばなくて大丈夫。
自分で帰れるから」
流石にタクシー代なんて勿体無いし、勿論叶芽に出させるわけにもいかない。
「ナギってさ頑張り過ぎだと思う。
少しくらい休んだ方がいいよ。
なんならここの鍵渡すから休みたいって時は好きに使っていいよ。
帰るのしんどいってならここ泊まっていいし」
鍵を渚に預けるので泊まりたいなら泊まっていいし、今後もホテル代わりに使っていいと言う叶芽に流石にそれはダメだと諭す。
「最近出会ったばっかりの奴に鍵渡しちゃダメだからね?
もし俺が悪い奴で、ここにあるもの盗んじゃったりしたらどうするの?」
「何か欲しいものでもあるならいいよ」
盗まなくても欲しかったら欲しいと言ってくれればあげると言うと渚はムッと眉を寄せる。
「何それ、俺がビンボー人だから恵んであげるって?」
貧乏人と馬鹿にされているような気がして少し腹が立った。
しかしそう言うつもりのない叶芽は彼の言葉に戸惑う。
「えっと……なんか気に触るような事言ったならごめん……
傷付けるつもり無かったし、俺そう言う意味で言ったんじゃなくて、その……ナギがそれで俺の傍にいてくれるならって……」
「それで俺が喜ぶと?」
「ごめん……
でもそっか、違うんだ……」
彼が喜んでくれるならと本気で思った。
それで心を繋ぎ止めて置けるならと……
けれどそれは違ったようだ……
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