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恋人①
ある土曜日のお昼。
この日佑真は叶芽の家に来ていて、彼のオカメインコと戯れていた。
「最近来てなかったから忘れられてるかと思ったけど……」
慣れてない人には人見知りするオカメインコ達。
暫く訪れていなかったので逃げられるかと思ったが、オカメインコがここに来た頃からよく戯れていたのでしっかりと記憶してくれていたようで、頭を撫でられている。
「流石に忘れないよ。
やったら佑真に懐いてるのに……」
頬を膨らませて拗ねたように言う叶芽。
オカメインコ達は何故か佑真に一番懐いていて、叶芽はそれに嫉妬しているのだ。
「飼い主俺なのにさ~。
しかも一番可愛がってるのになんでだよ!!」
「まぁ正直言うなら、俺がお前みたいにガツガツいかないからだろうよ。
あんまガッつくと怖いだろ」
「そんなこと無い!!
いつもそ~っと優し~く行ってるし!!」
そう言って叶芽は怒る。
「そう言うとこだよ。
騒がしい」
騒がしいのは否定出来ないので反論できない。
「別にいいもん騒がしくても。
それがいいって言ってくれる恋人いるから」
「…………………はぁ?」
叶芽の口から似つかわしくないような恋人と言う単語が出てきて、佑真は思考が停止してしまう。
「恋人って何?」
「実はね、ナギと付き合う事になった。
今度デートする予定」
「はぁ?意味わかんねぇんだけど……
なんで付き合う事になったわけ?
つうかそいつお前の家の事も知ってんのか?」
寝耳に水の話しに、佑真は大きく動揺し、取り乱した。
まだ会ったことの無い男。
どんな人物なのかも分からないその男と叶芽が付き合うなんて受け入れられない。
「俺が柊の人間なのも知ってるし、なんで付き合う事にって、お互い好きになったからとしか……」
「それ騙されてねぇ?
柊グループなんてとんでも無いくらい大企業だぞ?
誰だってお近づきになりたいだろ」
大企業の社長の息子と懇意にしたい者は沢山いるだろう。
ましてやΩの叶芽に近づくなんて何か裏でもあるのではと勘繰ってしまう。
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