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第1話 別れと・・・
奏耶(カナヤ)は熱をだし寝込んでいた。
いつもは母がそばにいてくれていたはずだったが、
その日は天気が悪く、父親が出張から帰宅予定だったが
駅のタクシーもバスも人が多く仕方なく
母が迎えに向かわなければいけなかった。
実は、この日は奏耶の10歳の誕生日だった。
祖母がお祝いの為遊びに来ていたので
薬が効き眠っていることを確認した母は
「奏耶、ママ、パパを迎えに行くけど一人で留守番出来る?」
「・・・うん・・・大丈夫・・気をつけてね!ママ」
「早く変えるから待っててね」
冷んやりとした母の手は心地良く奏耶は再び眠りに着いた。
どのくらい眠っていたのだろう。
すっかり熱が引いた奏耶の側にいたのは母では無く
祖母が涙を流しながら奏耶の手を握っていた。
「おばぁ・・ちゃん?どうしたの?痛いの?・・・ねぇ、ママとパパは?」
掠れる声で祖母に質問すると祖母は声を殺すように答えた。
「パパとママは・・・事故にあったのよ・・・」
「・・・えっ・・・」
まだ力が入らない身体を起こし祖母に聞いてみる。
「パパとママ、ケガしたの・・・?だからおばあちゃんだけががここにいるの?」
「・・・奏耶、よく聞いて、パパとママはね、駅からお家に帰るときにね・・・
大きな車の事故に巻き込まれて・・・」
そのまま祖母は泣崩れた。
現実が受け入れられない奏耶は一時的に言葉を失い
笑顔さえも失ってしまった。
死んでしまった事がよく理解できていない奏耶は
ただ、泣いている祖母の手を握って
「おばあちゃん、大丈夫?」
としかいう事が出来なかった。
熱も引き体調が落ち着いたころひっそりと
両親の葬儀を迎えた。
奏耶は両親がいなくなってしまった事が未だに信じることが出来なかった。
家で待っていたらまた、二人が笑顔で
「ごめんね、奏耶。寂しかった?」
と笑顔で抱き締めてくれるのではないか?と
数日の間は玄関のところでずっと待っていた。
見かねた祖母は
「奏耶・・・パパとママは先に天国に逝ってしまったんだよ。」
「・・・うん・・・」
俯きながら奏耶は返事をする。
「奏耶、ばぁちゃんとこ来るかい?」
「・・・うん・・・ここに居てもパパと、ママ・・・帰って来ないんでしょ?」
「・・・そうだよ・・・ばぁちぁんも1人だからね。奏耶が一緒に居てくれたら
寂しくないよ」
優しく微笑みながら祖母は奏耶を抱きしめた。
「うっ・・ばぁちゃん・・・ばぁ・・・ちゃん・・・」
奏耶は泣きながら祖母に抱き着いたが、祖母はただうんうんとうなずいていた。
そして数日後、奏耶は祖母と共に
田舎の小さな村に引っ越したのだった。
一度に両親をなくし、
壊れかけていた奏耶は、祖母の暮らす小さな村で
少しづつ元気を取り戻していった。
そして、奏耶はその村でお気に入りの場所を見つけ
緑に囲まれて暮らすことで不思議な体験と
運命的な出会いすることになるのだった。
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