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第2話 出逢い

奏耶が祖母の元で暮らすようになって8年ほどたっていた。 生まれつき色素が薄く白に近い髪、薄茶色で綺麗で大きな瞳の奏耶は 18歳になっていた。 今では明るく皆に好かれる子になっていた。美少年と言う言葉がぴったり当てはまる青年に成長していた。 ここに来た頃はいつも一人でただ泣いているばかりだった。 元気になって欲しいと思った祖母は 奏耶に村に伝わる不思議な話をした。 「奏耶、昔からこの村は神様に守られているんだよ」 「神様なんて・・・いないよ・・・」 「そんなことないよ。神様はばぁちゃんに奏耶を残してくれた。 パパとママは天国に行ってしまったけれどでも、奏耶を残してくれた。 ばぁちゃんが一人にならなかった。奏耶も寂しいだろうけどばぁちゃんも 寂しいんだよ。でもね、この村には神様がいるんだからね!」 「・・・どこに?・・・」 「ばぁちゃんちの裏の山に今でもいるよ。姿は見えないけど ずっとこの山を守ってくれているよ。」 「・・・会いに行ったら会える?」 「さぁ、いつまでも奏耶がそんなんじゃ神様は会いに来てくれないね」 「・・本当に?」 「あぁ、本当に。今から行ってみるかい?」 「うん・・・ばぁちゃんと行く・・・」 「じゃぁ、連れて行くけど、約束しておくれ」 「うん・・・する」 「でもね、その場所には祭りの日しか行っては行けないと村の人たちは言うんだが、内緒じゃよ?」 「・・・どうして?」 「そこは神様の住む場所だから、決まった日しか行ってはいけんのよ」 「そうなの?」 「でもね、ばぁちゃんはヒミツの道知ってるから内緒で奏耶に教えちゃるけんね」 にっこりと微笑み人差し指をそっと奏耶の口元に当てる。 嬉しそうな祖母の顔を見ると奏耶も笑顔になった。 祖母の手を握り、家の裏から細長いけもの道を進む。 その時、鬱蒼と茂っている草や木の枝が二人の進むべき道を示すように 避けていた。奏耶は不思議な気持ちで祖母と共に歩いて行った。 10分程進むと拓けた土地に出た。 途端に奏耶と祖母の前を突風が走り抜けた。 「・・・おかえり・・・・」 低く優しい声が奏耶の頭の中に響く。 奏耶はふと、上を向いた。 大きな1羽の鳥が上空を回っていた。 一緒に空を見上げ祖母は微笑みながら 「おやおや、オヤシロ様が喜んでらっしゃる」 「オヤシロ様?って誰?」 「オヤシロ様は、ほれ、そこの真ん中に小さな祠があるじゃろ?」 そういうと、祖母は木々の隙間から見える小さな祠を指差した。 小さく古い祠がある。 その時、奏耶の周りを暖かい風が包みこむように吹いてくる。 奏耶は先程の出来事を聞いてみる。 「ばぁちゃん、今・・・おかえり・・・って言った?」 「ん?なんも、言っとらんよ。どうやら奏耶はオヤシロ様に好かれとるね」 「オヤシロ様って誰?」 「オヤシロ様はこの村を守ってくれている神様じゃよ」 「神様っているの?」 「あぁ、いるよ。ここでは年に一度祭りの日に会えるはずじゃよ、あと、ここに来たことは皆には内緒じゃよ」 「うん。わかったよ、ばぁちゃん」 なぜか、暖かい気持ちになった奏耶は祖母の手を強く握った。 そんな昔のことを思い出しながら奏耶は昔、祖母と約束した場所で オヤシロ様の祠を見つめていた。 あの時、祭りの日だけと約束していたが、時々内緒でここに来ていた。 奏耶はあの時聞いた声がもう一度聞きたくて何回もここに来ていたが 聞くことは出来なかった。 「・・・今日も聞こえないな・・・残念・・・」 そう呟いた時、背後から追われるような風邪が吹いてくる。 「・・・もう少しだ・・・」 はっきりと聞こえたあの時の声・・・ 「えっ、今の・・・」 奏耶は空を見上げた。 すると、あの時見た大きな鳥がくるくると回っていた。 奏耶は身体の奥から熱い何かがこみ上げてきた。 「・・・会える・・・のかな・・・オヤシロ様?なのかな・・・」 なんだかわからない高揚した気持ちだったが、奏耶一旦家に帰ることにした。 もうすぐ祭りだ。 今年は何故か今迄と違う予感がした。

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