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第3話 決断

奏耶はオヤシロ様の山からそのまま家に帰ると家の前に 親友の柳原公貴(こうき)が立っていた。 奏耶が引っ越して来た頃、容姿が少し変わっていることで 学校の友達や、村の一部の人たちに好奇な目で見られ 引きこもり気味だった奏耶に唯一声を掛けて来て仲良くしてくれていた友人だった。 家も近所で、祖母が留守の時や寄り合いでいない時は家に呼んでもらい まるで兄弟のように接してくれていた。 今の奏耶がいるのは祖母と公貴と、その家族がいてくれたからこそだと思う。 そんな親友の公貴が玄関の前にいた。 奏耶にきがつくと慌てたように両手をブンブンと振っている。 「公貴?どうしたんだよ」 奏耶が駆け寄ると 「良かった・・・お前、どこいってたんだよ!学校はもっちっと早く終わってただろ?全く、探したぞ!」 「ごめん。。。ちょっと散歩してた」 「っか、そうじゃなくてな!!1時間ほど前に、お前んちのばあちゃんが倒れて隣町の病院に運ばれたって!」 公貴がそういうと、顔色がなくなる奏耶 「えっ!どこに運ばれたの!ばぁちゃんは?」 奏耶の血の気がひいてくるの見ていてもが分かる。 焦る奏耶の肩を掴み、公貴が逆に大きな声をあげる。 「落ち着け!奏耶!ばぁちゃんは大丈夫だから、一旦、必要なもの持って病院行こう!今うちの母さんが一緒に居るから安心しろ」 震えている奏耶を落ち着かせると、荷物をまとめさせ、公貴の父親の車に乗り 祖母が運ばれた隣町の病院へと向かった。 病院に着くと、すぐに医師に呼ばれ奏耶は先生と話をすることになった。 緊張しながら先生に質問してみた。 「先生、ばぁちゃ、祖母はどうなんですか?」 「あなたのおばあさまの姫月さんはかなり無理していたと思います。」 思わぬ言葉を医師から聞かされ奏耶は動揺した。 「えっ、でも、ばぁちゃんは、いつも元気でしたけど・・・」 「そうですか。姫月さんですが、正直今の段階ではせいぜい痛み止めを渡すくらいしか手はありません。数日入院してからの退院という形が一番かと。一度話し合って下さい。そして本人の意思を尊重してあげて下さい。」 感情がこもっていないそんな医師の言葉が遠く聞こえる。 だが、思い切って聞いてみる奏耶 「先生、正直に教えて欲しいんですが、祖母はどんな病気でどのくらい持つんですか。」 すると、いしは少し間を置き 「正直にいうと、癌です。ですがもう全身に転移しているのでどこが、どうとは言えません。多分、全身に痛みはあるはずなんですが、年齢も年齢なので進行は遅かったので今まで待っていたとしか言えない状況です。」 奏耶は言葉が出なかった。 いつも笑顔で自分を支えてくれていた祖母が実は病気だった事がショックだった。 だが、今更足掻いても祖母の命のタイムリミットは長くはない。 そうなると、今できる事をやろうと焦りながらも考えていた。 「わかりました・・・ばぁちゃんと話して決めます。でも。。。正直ばぁちゃんはあと、 どのくらい・・生きれるんですか・・・」 振り絞る声で質問してみる。 「・・・はっきりはわかりません。長くても3ヶ月、ですが体調になりますが、そうなると いつ亡くなってもおかしくない状況です。」 「・・・そんな、そんな悪いんですか・・・」 「確かに、悪いです。普通ならもうとうに亡くなってもおかしくない体調なんです。ですが今もこうして元気でいたことは姫月さんには生きる、生きなくては行けない!という強い意志があったからこそここまで持っているのだと思いますよ。」 医師がそう告げると奏耶は涙が止まらなかった。 両親がなくなってから8年、奏耶のことを大切に育ててくれた祖母。 きっと、自分がいなくなると奏耶が一人になってしまうからと心配し無理して今まで頑張ってくれていたことを思うと胸が締め付けられてしまい、涙が止まらなかった。 「・・・せん・・せい、ありがとう・・・ございます。ばぁちゃんはきっと病院での生活は望まないので体調が落ち着いたら一緒に帰ります。」 「姫月さん、大丈夫ですか?」 心配そうに声をかけてくる医師。 「・・・はい、ありがとうございます。」 奏耶は真っ直ぐ医師の目を見て答えた。 話が終わり、部屋を出ると公貴が待っていた。 「奏耶、大丈夫か?・・・」 「・・・うん、大丈夫だ。こんな顔してたらばぁちゃんに怒られる。」 「ばぁちゃんはどうだった?」 「・・・正直言って・・・良くないらしい・・・」 「マジか・・・でも、でも、また元気になるさ!な?お前がそんな顔してたらばぁちゃん心配するぞ?お前が今度はしっかりばぁちゃんのためにがんばらないとだぜ?」 悲しいけれど公貴の優しい言葉に少し救われた。 「ありがとう・・・そうするよ・・・でもその前に顔洗ってくる。」 そして奏耶はトイレに向かい顔を洗う。 鏡に映る自分の顔を見ながら思い出す。 この容姿でいじめられたりしても祖母だけははいつも味方でいてくれた。 両親の代わりにたくさんの愛情を注いでくれた。 今の自分がいるのは友人と祖母のおかげだと充分わかっている。 だが、『死』という現実を改めて受け止める。 これから一体どうなるのかはわからない。 だが、ここで心を決めておかないときっと悲しみに飲み込まれてしまう。 強くありたい!祖母に迷惑は掛けたくない。 限りある命なら最後まで心配掛けないよう思い切り元気な自分で祖母を安心させたい。 昔の自分ではない。何も出来ない幼い自分でもない。 祖母との限られた時間の中で後悔しない様にしよう! 鏡の中の自分にこう言い聞かせる! 「奏耶、お前は強くならないといけない!ばぁちゃんのためにも!」 そう声を掛け頬を叩く! 気合だ! これからの時間、後悔しないよう生きる! そんな決意を胸に祖母が眠っている病室へと向かったのだった。

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